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教師インタビュー

byマガジン編集部 マガジン編集部

黒川まどかさん(日本語教師兼日本語教師のためのメンタルコーチ)

日本語教師としての「私の流儀」

日本語学校とインターナショナルスクールで日本語教師をされている「黒川まどか」さんにお話を伺いました。

【黒川まどか女史のプロフィール】

通信制の大学在学中に養成講座に通い始め、講座が終了した2013年7月に日本語学校に就職。最初は非常勤教師としてスタートし、約半年後から常勤として勤務。

日本語教師として海外でも経験を積みたいと思っていたところ、同じ養成講座のクラスメイトが国際交流基金主催の日本語パートナーズへ参加していたことを知り、自身も応募。2017年7月から2018年の3月まで、インドネシアのジョグジャカルタへ派遣されることとなった。現地では高校の日本語の授業のアシスタントとして活動。

日本へ帰国後、元々勤務していた日本語学校に非常勤教師として復帰。2019年7月からはインターナショナルスクールでも正社員として日本語のクラスを担当。2校で活躍されている。

また、コーチングの資格を所持されていて、授業内の活動にコーチングの手法を取り入れたり、自主的に日本語教師向けの勉強会を開催したりしている。

 

420時間の日本語教師養成講座を修了。

日本語教育能力検定試験合格。

Q.日本語教師を目指したきっかけを教えていただけますか。

一言で言うと、思いつきです。海外で働きたいという思いが前からあったので、それなら日本語教師がいいのではないかと思い立ちました。実は祖父も日本語教師で、祖父は台湾で教えていたのですが、その影響もあったのかもしれません。私の場合、思いつきで行動を起こしたほうがうまくいくと感じています。

 

Q.現在2校で教えられているとのことですが、どんな国籍の方たちにどんなレベルの日本語を教えていらっしゃいますか。

日本語学校のほうは、足掛け7年半勤めているので、その時期によってだいぶ国籍が変わってきたという印象です。基本的には中国がいちばん多いのですが、私が入社した当時は、ネパール、ミャンマー、ベトナムの学生もいました。最近はやはりビザの関係で中国に偏っていると思いますが、その他にも、ベトナム、インドネシア、タイ、ロシアからの学生もいて、比較的多国籍な学校だと思います。日本語のレベルは、ゼロ初級から上級までを担当しています。

 

インターナショナルスクールのほうは、高校生が対象で、ほとんどの学生が日本国籍です。帰国生が半数ぐらい在籍しており、国籍は日本にあっても海外の教育を受けていて、日本語はネイティブでないという学生です。インターナショナルスクールでは自立学習を大切にしていて、学生はそれぞれ勉強したい内容を自習しているので、同じ教室に集まってはいますが、やっていることはばらばらです。私は予約や質問があったら対応します。大学入試のための小論文を見てほしいなどといったリクエストがあります。

 

Q.どのような教材を使って指導されているのでしょうか。

インターナショナルスクールのほうは、基本的に生徒が教材を持ってくるというルールなので、私から教材の提供をすることはあまりありません。例えば、高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)を受ける人には、学校に置いてある過去問を提供したり、小論文が必要だけれども初心者だという人には、留学生用の小論文の書き方やEJUの記述問題を一緒にやってみたりしています。

 

日本語学校のほうは、初級は『みんなの日本語』、中級は『みんなの日本語中級』や『中級を学ぼう』、上級の場合は『学ぼう!にほんご』などを使用しています。

 

Q.オリジナルで作成したり工夫されたりしている教材は何かありますか。

活動は自分で作成したワークシートを使っています。また、日本語学校は週に1回「担任の時間」という授業があり、内容を自由に決めることができるので、担任をしていたときはコーチングをしていました。予定表で決められた教科書の内容が終わったら、ホームルームや「担任の時間」では教師の裁量で授業をしていいという、自由な雰囲気の学校です。

 

学習目標を決めてもそれに伴った勉強をしなかったり、決めたところで行動が伴わなかったりということが多いと思いますが、コーチングのスキルを使うと、目標がきちんと自己実現に繋がってきます。そのため、学生に向けて、コーチングを取り入れた授業は結構行ってきたつもりです。

 

学習者との思い出

 

Q.黒川さんご自身がコーチングに興味を持たれたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

以前勤めていた会社の先輩がコーチングスクールに通っていて、それをFacebook越しに見ていました。そのときはコーチングのコの字も分からないような状態でしたが、写真の中の先輩たちの笑顔がすごくきらきらして見えました。大人がこんなに満面の笑みで写っていることはなかなか珍しいと思い、それをきっかけに興味を持ち始めました。インドネシアから帰ってきたのと同時に、コーチングスクールに通い出して、そこでコーチングの資格を取得しました。

 

Q.日本語教師としてこだわっていることはありますか。

コーチングを学び始めてから特に意識するようになったことなのですが、学習者が「できたところに焦点を置く」ということです。できなかったところに焦点を置きがちですが、私はできたところに注目するようにしています。そのうえで、相手を勇気づける関わり方をするように心掛けています。

 

 

Q.日本語教師としての武勇伝はありますか。

武勇伝というより成功体験と言えるかもしれませんが、コーチングを使った授業です。月に1回、学習者に「1ヶ月後どんな自分でいたいか」という目標を書いてもらって、今の自分はどうなのか、そのギャップを埋めるために毎日できることは何なのかを考えてもらいます。毎日することなので、どうせなら楽しいことにしようと伝えています。例えば、ある学生は自分の好きなYouTuberに日本語でコメントを書く、引越しをしたい学生はSUUMOで部屋を探す、アルバイトをしている学生は日本人の同僚とLINEの交換をするといったことを決めていました。週に1回の私の授業で進捗を聞くようにしたのですが、そのときは相手を承認する関わり方を続けるようにしました。目標通りにできなかった学生に対しても、「教えてくれてありがとう」と声を掛けました

 

1ヶ月後に、1ヶ月を振り返って、目標の自分が10点満点だとしたら、今の自分は何点なのかを採点してもらいました。普通はできないところに焦点を向けがちなのですが、私の場合は「できなかったところは自分でも分かっていると思うので、どんなに小さなことでもいいから、できたところだけ教えて」と伝えます。最初は少ししか書かなかったり、点数が低めだったりした学生も、それを繰り返していくうちに、小さなことをたくさん書いてくれるようになり、自己肯定感も高まったように感じました。

 

どこの日本語学校でもよくあることだと思うのですが、特にアルバイトをしていない学生は、日本人との関わりが学校だけで、校外の日本人と関わることに恐怖感を覚えている人が多い印象です。しかし、この活動を続けていくうちに、コロナ禍ではありましたが、自分と同じ趣味を持つ人同士のサークルに入ったり、ランゲージエクスチェンジのアプリを使って日本人とコミュニケーションを取ったり、外の日本人、そして日本社会と積極的に関わろうという姿勢が見られるようになりました。

 

Q.日本語教師として働くうえでの喜びはどんなことがありますか。

学習者が良い方向に変化をしていく場面を一緒に共有できるところに魅力を感じています。日本語のスキルはもちろん、クラス内のみんなが仲良くなったり、自信を持って自分の人生を生きたりしている姿を見せてもらえることが、とても大きな喜びです。

 

Q.逆に、苦労はどんなことがありますか。

今はもう常勤じゃないので関わる機会は減りましたが、学生の進路相談です。進路相談を担当していた当時は、なかなか自分の決めた進路に行けなかったり、やりたいことがあるけれど経済的な理由で断念したりという話を、本当に耳にタコができるくらい聞きました。また、学生の話を聞いて「世間体を気にして自分が本当にやりたいことを諦めているのではないか」と自分がもやもやしてしまうこともありました。

 

Q.印象に残っている学生との思い出はありますか。

ずっとリモートの授業が続いていて、今年の2月か3月くらいに久しぶりに学校に行ったときに、他の先生から「この手紙を預かっています」と言われて、2通の手紙をもらいました。おそらく手紙を書くという授業の一環で私に書いてくれたのだと思うのですが、今までのお礼や私とのエピソードが詳細に書かれていました。その時強く思ったのが、教え方ももちろん大切ですが、教え方よりも相手に対する関わり方というのが相手の心を動かすということです。「面談のときにとても真剣に聞いてくれました」や「日々の目標に向けて楽しんで勉強できたので、ここまで日本語のレベルを上げることができました」など、嬉しいエピソードが書かれていました。

 

 

Q.尊敬する日本語教師はいらっしゃいますか。

嶋田和子先生です。大学の授業に客員講師としていらっしゃったことがありました。私はちょうどそのとき養成講座を受講中だったのですが、パワフルな方で、本当にいろいろなことに挑戦されていて、その姿を見て、私もこういう教師になりたいと思いました。

 

Q.これからの日本語教育について、業界的な展望とご自身の今後の目標の2点を聞かせていただけますか。

日本語教育業界は今過渡期ですよね。現役の教師でももう1回試験を受け直さなければならないということが話題に上がっていますが、個人的にはあまり現実的でないと思っています。現役で働いている日本語教師はたくさんいるので、1年で試験を受けられる場所が確保できるのか疑問です。また、現役の教師には猶予の期間があるのか、これから日本語教師をめざす方々の試験と差別化は図らなくていいのかなど、気になる点はたくさんあります。

 

個人的な目標としては、日本語教育とコーチングの普及をもっと進めたいと思っています。

 

Q.どんな働き方が自分らしいと思いますか。

おそらく自分には一つのところで働くというのが合わないと思うので、ちょうど今の働き方が気に入っています。インターナショナルスクールには最初アルバイトで入り、ある時社員にならないかという打診をいただきました。その時、インターナショナルスクールはいわゆる普通の日本語の授業とは違いますし、日本語学校のほうも辞めたくないという思いが過りました。それを伝えたところ、副業をしてもいいと言ってもらえたので、インターナショナルスクールの社員と日本語学校の教師を両立することができています。

 

日本語学校は本当に長い間お世話になっているところで、教え方や要領が把握できているので働きやすいです。担任が授業のスケジュールを作るのですが、「この先生はこういう先生だから、この内容をお任せするのだったらこの先生がいいな」ということが分かります。とてもありがたいことだと実感しています。

 

また、自分自身でもコーチングの活動をしています。今年の最初に、もう一度日本語教育能力検定試験を受け直そうと決めたのですが、ひとりで勉強していたら潰れてしまうと感じ、合格したい人たちと一緒に仲間を募って勉強ができたらいいなと思い、Facebookを通じて、コーチングを取り入れて合格を目指すコミュニティを立ち上げました。検定試験の勉強は授業とは全然関係ないと切り離してしまう人もいますが、私は自分の授業に繋がると信じています。また、同業者にコーチングをするというのも私の1つの夢だったので、実現できて嬉しいです。

 

Q.日本語教師という仕事を通じて学んだことはありますか。

授業中の臨場感や空気感がすごくて、鳥肌が立つという瞬間が本当にあるということです。他の業種ではなかなか得られない感覚だと思います。

 

例えば、私が勤務している日本語学校は、午後の授業が16:30に終わるのですが、16:25の時点で5分余ったので、学生が苦手な助詞について復習しようとしたときがありました。そのとき、学生みんなの目が必死になったのを今でも覚えています。普通は5分前になると帰りの支度を始める人もいると思いますが、そのクラスはみんな必死に食らいついてきました。テスト前というわけでもなかったのですが、気迫がすごくて、鳥肌が立つくらいの空気感でした。また、私は雑談からゆるやかに授業内容に入るスタイルなのですが、教科書を開く指示をしなくても、学生が「あ、ここから授業が始まっているんだ」と察して、一斉に本を取り出すということもありました。

 

Q.座右の銘を教えていただけますか。

座右の銘というのは特にないのですが、自分の日本語教師としてのビジョンで大切にしていることは「教師も学習者も自分の人生を生きる」ということです。

 

Q.日本語教師としてのご自身の強みはどんなところでしょうか。

技術的なところを言うと、私よりも優秀な方がたくさんいらっしゃるので難しいのですが、強みはやはりコーチングができるところだと思います。相手ができているところをよく見て、勇気づける関わり方をすることができます。そして、結果的に相手に自信をつけてもらえるところだと思います。

 

Q.最後に、日本語教師という仕事の魅力を教えてください。

学習者の成長を感じられるところです。できなかったことができるようになるという変化を感じやすい仕事だと思います。

 

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マガジン編集部

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この記事を監修した人

「言葉を教え、文化を広げ、異文化に橋を架けよう」というサービス理念のもと、国内・海外に日本語教育を展開している会社です。日本語を学び、日本語を使い、日本語でつながり、夢を実現するまでの教育を行っています。

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