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日本語教育トピックス

byマガジン編集部 マガジン編集部

日本語教師なら避けては通れないJLPT(日本語能力試験)について徹底解説

「自分自身の英語力を証明するために受ける試験とは何か」と聞かれたら、あなたは何と答えますか。あなたが海外の大学への留学をめざしているのであれば、受けるべき試験は、IELTSやTOEFLです。古くからある英検(実用英語技能検定)ですが、こちらは日本独自の試験なので海外では通用しません。どちらかというと、中高生が向上心を持って英語を学ぶためのツール的な役割になっています。

 

このように、どのような目的で自分自身の英語力を証明するのかによって受けるべき試験は異なります。では、日本語の世界ではどうなっているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

就職や進学に必要な語学力の証明

日本で転職や就職を考えているのであれば、圧倒的に「TOEIC」を受験しておくべきでしょう。日本企業が出している求人票にも「TOEIC 800点以上」というような表記をよく見かけます。実はTOEICの受験者は6割強が日本人、1割強が韓国人であり、世界的に広く指標として使われているわけではありませんが、受験料が安価で比較的手軽に受けられる内容であったため、日本社会に広く浸透し、指標として使われています。

 

日本の大学などへの留学を考えているのであれば、受けるべき試験はEJU(日本留学試験)です。しかし、中高大といった教育機関への留学でなければ、日本語能力の指標として広く用いられているのはJLPT日本語能力試験です。就職活動などで見かける求人票にも「JLPT N2以上」という表記を確認することができます。

 

したがって、日本国内で日本語を教える場合、学生のキャリア構築を考える時にはJLPTを避けて通ることはできません。しっかりと理解しておく必要があります。そこで、今回の記事ではJLPTについて解説したいと思います。

JLPTとは

改めてJLPTとは、日本語を母語としない人を対象に行う試験です。漢字やひらがななどの日本語の文字、語彙や言い回し、文法についてどのくらい理解しているのか、またその知識を活用して実践の場でどのくらいコミュニケーションがとれるのかといった総合的な日本語能力を測定し、認定することを目的としています。レベルはN1~N5までの5段階に分けられており、最もレベルが高いのがN1です。こちらについてはのちほど詳しく説明いたします。なお、試験は選択肢によるマークシート方式で行われます。

 

参考:JLPT公式サイト 目的と沿革

https://www.jlpt.jp/about/purpose.html

EJUとの違い

JLPTは前述の通り、一般的な日本語能力の測定を目的としています。それに対してEJUは、日本の大学などで講義を受けることができる日本語能力の測定を目的としています。

 

2002年にEJUが実施されるようになって以降、JLPTは、海外から日本の教育機関への留学目的というよりは、日本国内での就職や専門学校などへの就学を目的とした方向けの試験という位置付けになってきています。

 

ちなみに、前述した英語試験・IELTSには大学進学向けの試験であるAcademicモジュールと、移住目的で受験するGeneral Trainingモジュールが存在しており、日本でいうEJUとJLPTの両方の役割を担っているようです。日本では、JLPTとEJUは別の団体が運営しているため、統合されることはないのでしょう。

 

試験内容にはそれぞれ特徴があります。まず、JLPTには記述問題がありません。全て選択肢によるマークシート方式で行われます。大学での講義受講やレポートの執筆などを行う人が対象ではないのと、受験を抑えることを目的としているからだと考えられます。一方、EJUには語学としての知識(語彙や文法)を問う問題はありません。受験対象者である留学希望者は、大学での講義受講やレポートの提出ができるかどうかが重要なのであり、学問として日本語を理解している必要がないからです。このように、それぞれの試験の目的に合った問題が出題されていますので、難易度などを比較することはとても困難です。

 

留学生がJLPTを受験するメリットとは

JLPTには、学校での単位・卒業資格認定や、企業での優遇、社会的な資格認定など、さまざまなメリットがあります。

 

参考:JLPT公式サイト 日本語能力試験のメリット

https://www.jlpt.jp/about/merit.html

 

出入国管理上の優遇措置ポイント

「高度人材に対するポイント制による出入国管理上の優遇制度」というものがあり、ポイントの合計が70点以上になると、出入国管理上の優遇措置が与えられます。ちなみに、JLPT N1の合格者は15ポイント、N2の合格者は10ポイントが加算されます。

 

参考:出入国在留管理庁 高度人材ポイント制とは?

http://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_3_system_index.html

日本の医師等国家試験

海外において医師等の免許を持っている人が、日本の医師等の国家試験を受験するためには、JLPT N1の認定が必要です。

 

参考:厚生労働省 医師国家試験受験資格認定について

https://www.mhlw.go.jp/topics/2012/05/tp0525-01.html

 

JLPT N1が受験資格になっている、そのほかの国家試験は以下の通りです。

 

歯科医師、看護師、薬剤師、保健師、助産師、診療放射線技師、歯科衛生士、歯科技工士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救命救急士、言語聴覚士、獣医師

 

日本の准看護師試験

海外の看護師学校養成所を卒業した人が、日本の准看護師試験を受験するためには、JLPT N1の認定が必要となります。准看護師試験は都道府県ごとに行われていますので、詳しくは各都道府県に確認が必要です。

 

中学校卒業程度認定試験での一部試験科目の免除

外国籍の受験者の場合、JLPT N1またはN2の合格者は、国語の試験が免除されます。

 

参考:文部科学省 平成24年度就学義務猶予免除者等の中学校卒業程度認定試験(中卒認定)受験案内

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/sotugyo/1322849.htm

 

EPA(経済連携協定)に基づく看護師・介護福祉士

EPA(経済連携協定)に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナムから来日する看護師・介護福祉士の候補者は、JLPT N5程度(インドネシア、フィリピン)またはN3(ベトナム)以上の日本語能力が必要です。

 

参考:厚生労働省 インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/other22/index.html

 

JLPTで受験できる大学

日本の大学などへ留学を希望する学生たちは、基本的にはEJUを受験することになるのですが、EJUを実施している国はまだ多くはありません。2021年現在、EJU実施(予定)国は、インド、インドネシア、韓国、シンガポール、スリランカ、タイ、台湾、フィリピン、ベトナム、香港、マレーシア、ミャンマー、モンゴル、ロシアのみです。一方で、JLPTは、アジア圏だけでなく、大洋州地域、北中南米、西東欧、中東、北アフリカといった、約90の国と地域、約250の都市で実施されています。

参考:独立行政法人日本学生支援機構 日本留学試験国外実施 問い合わせ先(アジア)

https://www.jasso.go.jp/ryugaku/study_j/eju/examinee/contact/asia.html

参考:JLPT公式サイト 海外の実施都市・実施機関一覧

https://www.jlpt.jp/application/overseas_list.html

 

こういった状況を踏まえ、大学によっては広い国と地域から留学生を受け入れることを目的として、JLPTの受験結果を日本語能力を証明する方法として認めているケースがあります。もしあなたが、EJUを実施していない国や地域で働く日本語教師なのであれば、JLPTの受験のみで入学できる教育機関を知っておくと良いでしょう。

 

それぞれのランクが意味する語学力とは

JLPTにはN1、N2、N3、N4、N5の5段階のレベルがあります。いちばん易しいレベルがN5で、いちばん難しいレベルがN1です。

 

N1、N2は、主に教室内で学んだり仕事をしたりする際に、基本的な日本語がどの程度理解できるかを測ることを目的としています。N4、N5は、日常生活において日本語がどのぐらい理解できるかを測ります。

 

求人の募集要項を見ても、複雑な日本語を使用して行う仕事に関してはN1レベルが必須となっています。複雑な日本語を使用しない仕事であってもN2レベルが求められることが多いので、日本国内で就業しようと考えるのであれば、N2レベル以上の語学力が必要です。ビジネスの場においては、N1に合格していても、それだけでネイティブレベルの日本語能力を持っていることにはならないので注意が必要です。

 

次の項目からは、各レベルについて解説していきます。

 

N1:ビジネスレベル

読解

・新聞の論説や評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章を読んで、文章の構成や内容を理解することができる。

・さまざまな話題の内容について、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる。

 

聴解

・自然なスピードで発話される、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる。

 

N2:上級者レベル

読解

・新聞や雑誌の記事、解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる。

・一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現意図を理解することができる。

 

聴解

・日常的な幅広い場面で、自然に近いスピードで発話される、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。

N3:日常会話レベル

読解

・日常的な話題について書かれた文章を読んで理解することができる。

・新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。

・日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。

 

聴解

・日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。

N4:初級者レベル

読解

・基本的な表現を用いて書かれた、日常生活の中でも身近な話題の文章を読んで理解することができる。

 

聴解

・日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。

N5:初心者レベ

読解

・ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文章を読んで理解することができる。

 

聴解

・教室や身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聴き取ることができる

 

参考:JLPT公式サイト N1~N5:認定の目安

https://www.jlpt.jp/about/levelsummary.html

 

まとめ

2002年にEJUが実施されるようになり、JLPTの役割はより鮮明になったように感じます。

 

日本語学習者には、日本より物価が安い国や地域の方が多い以上、受験費用は大きな要素です。選択肢によるマークシート方式で実施することで、受験費用を安く抑えることができます。また、日本に在留している外国籍の方にとっては、ポイント制による出入国管理上の優遇制度といった制度もありますし、就職活動時の日本語能力の証明などにも直結しますので、JLPTのレベルアップはとても重要な意味を持っています。

 

日本で教える日本語教師にとって、日常生活で使える日本語を教えることも大切ですが、学生のニーズを考えるとJLPT対策も避けては通れない課題だということを、再確認することができました。

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この記事を監修した人

「言葉を教え、文化を広げ、異文化に橋を架けよう」というサービス理念のもと、国内・海外に日本語教育を展開している会社です。日本語を学び、日本語を使い、日本語でつながり、夢を実現するまでの教育を行っています。

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