【日本語教育能力検定試験】独学におすすめの教材をご紹介!

日本語教師を目指す方法として、日本語教育能力検定試験の受験を考えたとき「本当に合格することができるのか」という不安を感じる方も多いのではないでしょうか

公益財団法人日本国際教育支援協会が公開している資料によると、令和2年の「日本語教育能力検定試験」合格者は2,613人でした。

受験者に対しての合格率は28.9%です。

司法試験の合格率が30%弱くらいですので、難関といわれる司法試験と同等の合格率です。

日本語教育能力検定試験は、難関資格のひとつです。

もうひとつ着目すべき点は、応募者が11,316名であったのに対して、受験者は9,033人にまで減っているということです。

応募の締め切りが早いため、一旦申し込みを済ませたものの、受験日までに勉強が間に合わず、受験を断念した人が相当数含まれていると考えられます。

参考:
公益財団法人日本国際教育支援協会 令和2年度日本語教育能力検定試験
http://www.jees.or.jp/jltct/result.htm

1万円を超える安くはない受験料のため、ある程度合格する自信を持っている人が応募しているはずなのですが、合格率も低く、離脱者も多いという状況です。

勉強の計画を立てず、何も対策を打たなければ、合格することは難しいです。

合格するためには、どのような教材・期間でどのように勉強すれば良いのかみてきましょう!

目次

試験スケジュール

日本語教育能力検定試験は、年1回(10月)の実施です。

願書の受付がかなり早い時期に終了するため、注意が必要です。

ちなみに2021年の例だと、受付期間は2021年7月5日(月)~8月2日(月)まででした。

願書は書店などで手に入れることができますが、締め切り間近になると品切れになってしまうこともあるので、早めにご用意ください。

試験時間は9:00~16:40となっており、丸1日を要するかなり長時間の試験です。

試験Ⅰ
・90分 / 配点100点
日本語教育の実践に関する基礎的な知識を区分ごとに出題

試験Ⅱ
30分 / 配点40点
試験Ⅰ及び試験Ⅲで求められる内容を音声で出題

試験Ⅲ
・120分 / 配点100点
基礎的な問題解決能力を問うため区分を横断した形で出題

いわゆる各地域の主要都市(札幌、仙台、東京、愛知、大阪、広島、福岡)にて実施されています。

開催場所は変更している可能性があるので、事前に必ず確認してください。

受験料は2021年に大幅値上げがあり、14,500円(税込)となりました。

出題範囲は以下のとおりで、太字記載項目が重点的に出題されます。

文法だけでなく、歴史や文化など、出題範囲は広範囲にわたっています。

参考:
公益財団法人日本国際教育支援協会「令和3年度日本語教育能力検定試験実施要」
http://www.jees.or.jp/jltct/pdf/R3.jisshiyoko.pdf

2つの学習方法を比較

日本語教育能力検定試験を受験するにあたって、そのアプローチ方法は、以下の2パターンがあります。

・主に参考書や問題集を利用した独学
・通信講座やオンライン講座を受講する

費用について

独学の場合

参考書や問題集を利用した独学の場合、必要になる費用は参考書や問題集の購入費用のみです。

そのため費用としては、数千円~2万円程度です。

講座の場合

一方で、通信講座やオンライン講座の場合は、受講料としておよそ10万円前後の費用がかかります。

ただし、日本語教師養成講座はおよそ50万円の受講費がかかりますので、それと比べればまだまだ割安であることは間違いありません。

学習の進め方

講座の場合

講座の場合、3~12ヶ月くらいでスケジュールが組まれています。

決められたカリキュラムに沿って学んでいくスタイルなので、日程やペースは講座にゆだねることになります。

拘束される時間も長く、スケジュールも決まっているので、受験前に余裕を持って受講を計画的に進めることをおすすめします。

独学の場合

独学の場合は、自分で計画を立てて、自分のペースで学んでいくことができます。

スケジュールが自由にならない人でも、早朝や空き時間に取り組むことができます。

独学の場合、最短で3ヶ月くらいで合格された体験談がインターネット上には見受けられますので、短期集中での合格も夢ではないようです。

しかしその場合、少なくとも平日は毎日1~2時間、土日のどちらかに3~5時間くらいの勉強時間を確保する必要があります。

独学で学んだあとに、試験対策に特化した講座のみを受講するという、複合型でチャレンジした方もいらっしゃいます。

個人の性格や仕事や学業との両立状況によりますので、独学と講座のどちらが良いのかは、一概には言えません。

過去の成功体験や失敗体験を振り返って、決めていただくと良いでしょう。

おすすめコンテンツ

独学で受験しようとしている方々にとって、心強い味方になってくれるコンテンツがYouTubeです。

例えば、こせんだ先生という方が、独学で合格する方法について動画を公開されています。

参考:
こせんだ式日本語教室〜Japanese Language Lesson by Kosenda〜
https://youtu.be/TwSmJGgaJwk

その他にも、はま先生など多くの方が動画を公開されているので、参考にしてみてください。

参考:
日本語教師のはま「【最速】日本語教育能力検定試験に独学で合格する方法【過去問に始まり過去問に終わる】」
https://youtu.be/0ClNLcea0Ro

【独学用】教材の紹介

独学で日本語教育能力検定試験に挑戦された方にお聞きすると、ほとんどの方が同じような教材を利用して勉強されていました。

・出題範囲をすべて網羅した基礎参考書
・用語集
・問題集
・過去問題集

勉強をしていくなかで、自分が苦手だと思う分野があったら、その分野に特化した参考書(日本語文法ハンドブックなど)を追加で購入すると良いでしょう。

最初から上記以外を用意する必要はありません。

次の項では、上記4冊の参考書について詳しく見ていきます。

出題範囲をすべて網羅した基礎参考書

日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド
ヒューマンアカデミー著

日本語教育業界においてバイブル的な存在で、日本語教育能力検定試験に合格したあとも、手元に置いておく方も多いようです。

最近の動向に合わせて版を重ねています。

特に最新版(2021年2月:第五版)は、第四版に比べて大幅に刷新されています。

ページ数も50ページほど増えており、第7部以外はすべて書き直されています。

もちろん統計データなども最新の数字に変更されています。

第四版にはない、特定技能に関しての記載があります。

この分野は今後試験に出る確率が高いため、正確に理解しておく必要があります。

以上の点から、最新版を購入することが望ましいです。

かなり分厚い本ですので、持ち歩いて使用する場合は、電子版の方が使い勝手が良さそうです。

基礎知識がまったくない初心者にとっては、専門用語が多くて難しく感じる方も多いかと思います。

学習の初期段階で挫折してしまわないように、最初のページから順番に学ぶのではなく、自分の興味がある分野から学んでいくことをおすすめします。

書面での独学を行う際、不安になるのは音声分野や記述問題対策ですが、特別章でフォローされており、音声試験対策用のCD(ダウンロード版もあり)も付いています。

用語集

日本語教育能力検定試験 分野別用語集
ヒューマンアカデミー著

日本語教育能力検定試験 50音順 用語集

ヒューマンアカデミー著

改訂版 日本語教育能力検定試験に合格するための用語集

岩田 一成、大関 浩美著

新合格水準 日本語教育能力検定試験 用語集

アークアカデミー編

専門用語が多いため、学習を進めるには辞書的な存在が必要です。

英語を学ぶときの辞書と同じで、相性の問題が大きいです。

読みやすさや表現の好き嫌い、本のサイズ感など、自分の好みの本を選ぶと良いでしょう。

分からない用語を調べるときはもちろんですが、持ち歩いて少しの合間を見つけては用語を覚えるという使用方法をする方も多く、持ち運びやすさも大きな選択ポイントになります。

問題集

日本語教育能力検定試験 合格するための問題集
アルク日本語書籍編集部編

長年にわたり検定試験の解答速報や検定対策セミナーなどを実施し、試験の傾向や内容を常に分析してきたアルクが、そのノウハウを駆使し、選りすぐりの演習問題として仕上げた試験対策の決定版です。

詳しい解説がついているので、問題の背景や関連キーワードなどを効率よく学習することができます。

聴解問題と記述式問題の対策として、豊富な問題量が掲載されています。

過去問題集

令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験問題
公益財団法人日本国際教育支援協会編

令和元年(2019年)度に実際に出題された問題と解答が掲載されています。

巻末には、試験の実施状況平均点などのデータも記載されています。

注意しなければならないのは、解答は記載されているものの、解説が書かれていません。

そのため、どうしてその解答になるのかは、この過去問題集だけでは理解できません。

したがって、参考書や用語集を照らし合わせながら勉強することになります。

補助的な役割の専門参考書

次に、苦手分野を克服・補強するために使える参考書を見ていきます。

文法

初級を教える人のための日本語文法ハンドブック
庵功雄著、松岡弘著、中西久実子著、山田敏弘著、高梨信乃著

中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック

庵功雄著、中西久実子著、高梨信乃著、山田敏弘著、白川博之監修

前項で紹介した基礎参考書などは、文法についての記載が弱いため、文法を専門的に学んだ経験のない方には物足りないかもしれません。

そんな方にぜひおすすめしたいのがこれらの本です。

初級文法・中上級文法の用法が、例文とともに詳しく載っています。

実際に日本語教師になったあとの教材作りにも活用できるので、将来を見据えて購入しても損はしない逸品です。

考えて、解いて、学ぶ、日本語教育の文法
原沢伊都夫著

日本語を教えるための基礎となる、文法知識を身に付けるための本です。

難しい専門用語を並べたり、法則を暗記させたりすることを目的としているのではなく、問題を解く過程を通して、普段何気なく使用している日本語の文法事項について、自らが考える体験を積み重ねていくことで学ぶ手法をとっています。

学校で学んだ「国語の文法」と「日本語教育のための文法」の違いに触れられるようになっています。

設問には解説がついているので、興味を持って学びやすい作りになっています。

聴解・音声

日本語教育能力検定試験 聴解・音声特訓プログラム

苦手な人と得意な人とがはっきりと分かれてしまうのが聴解・音声です。

苦手意識を感じているのであれば、注力して取り組む必要があります。

そこで頼りになるのがこちらの本です。

音声学の基礎がわかりやすく解説されており、段階的トレーニングを積んでいくことで確実に実力を身に着けていくことができます。

聴解編の模擬テストが2回分収録されているので、本番さながらの演習を行うことができます。

参考:
3ヶ月の完全独学で日本語教育能力検定試験に合格したブログ「独学の教材について13(私的おすすめランキング:1位・赤本)」
https://ameblo.jp/nihongokyoikudokugaku/

社会人の勉強 〜日本語教育能力検定試験勉強の巻〜「アルクの教材別オススメ度」
https://ameblo.jp/vc-adgc/entry-12545353918.html?frm=theme

令和4年から出題範囲に変更あり

大枠については変わらないようなので、まったく別の試験になってしまうといったことはなさそうです。

現在、公認日本語教師のありかたについて、日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議が行われています。

その内容を見る限りでは、おそらくは公認日本語教師の試験についても、公益財団法人日本国際教育支援協会が実施することになりそうです(2021年5月段階では未決定)。

したがって、日本語教育能力検定試験が、公認日本語教師の試験も兼ねるのではないかと考えられます。

令和4年からの出題範囲の変更も、公認日本語教師の出題範囲に合わせる必要からだと考えられます。

参考:
文化審議会国語分科会「日本語教育人材の養成・研修の在り方について 報告(改定版)」(43ページを参照)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/kokugo/kokugo_70/pdf/r1414272_04.pdf

キャリアコンサルタントという国家資格が新設された際、類似する既存資格からの移行が認められました。

前述した会議の場でも、公認日本語教師の資格が新設された際、日本語教育能力検定試験は再受験を免除すべきであるという議論がなされているようです。

前例を考えると、様子を見るというよりは、早めに行動して合格を勝ち取っておくほうが得策です。

まとめ

今回の記事では、日本語教育能力検定試験の受験を検討している方に知っていただきたい情報をまとめました。

金銭的な負担をかけずに資格取得にチャレンジしたいと考えるのであれば、独学が最適です。

公認日本語教師という国家資格が新設されたとしても、日本語能力検定試験に合格していれば、そのまま国家資格に移行されるか、なんらかの優遇措置が取られる可能性が高いと考えられています。

日本語教師の世界は過渡期であり、さまざまな改革が実施されていますが、それを待つのではいつまでもスタートラインに立てません。

まずは1冊の参考書を手にするところから始めてみませんか?

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