みなさんこんにちは。日本語教師は授業を行う際に、メインで使用する教科書だけでなく、さまざまな「副教材」を組み合わせていることを知っていますか?代表的な副教材として挙げられるものは、フラッシュカードなどの視覚的なものでしょう。
今回は、現役日本語教師の方に、実際に使っている副教材について伺いました。また、どのように授業で活かせば良いのか、最近の教材事情など副教材全体について見ていきましょう。ご自身で使っている副教材と比べたり、自分だったらどう活用したいか考えたりしながら読んでいただきたいです。
副教材とは?役割と意味
さて、副教材で何を使うかなどは、なんとなく分かるけれど、はっきりと用途や役割については説明できないという人も多いのではないでしょうか?副教材について基本事項をおさらいします。
まず、主教材はメインで使用する教科書です。それを補う機能の教材が、副教材です。もっとかみ砕いて説明すると、教科書だけでカバーできない部分を補う、例えば、絵カードや文法のまとめ本などの補助教材のことを副教材といいます。
副教材には、音声CDやフラッシュカード、カードゲーム、文法のまとめ、そして最近では動画などのコンテンツが挙げられます。 通常の授業は教科書に沿って進められますが、その中でよりスムーズに学習者の理解を促す役割を果たすのが副教材です。
そのクラスの性質や、理解の深度によって適切なものを選択し、教科書だけでは不十分な箇所の補強を行います。 次項では、実際に現役の日本語教師が使用している副教材の例をご紹介します。
現役日本語教師が使っている副教材
国内の日本語学校で勤務し、主に進学希望の学生を指導している先生に話を伺ったところ、試験対策にも使える教材を多く選択しているとのことでした。
「テーマ別中級を学ぼうシリーズ」「日本語総まとめシリーズ」「新完全マスター聴解が弱いあなたへ」の3冊です。
さまざまなシチュエーションの演習をするのに活用したり、リスニング力を鍛えたり、メインの教科書の補強をするのに使用しているといいます。これ以外にも、PC上で作成した図なども授業に取り入れているそうです。こちらは自作の教材にあたります。
授業全体の中で、その副教材がどのような役割を果たすかを明確にするように心掛けているとおっしゃっていました。ただ、やみくもに絵カードや自作教材を盛り込んでも授業全体が締まらなくなり混沌としてしまうので、とても大切な心掛けだと思いました。
アイデアばかりが先行してしまい、めちゃくちゃな授業になってしまうことは避けたいものです。授業準備には時間がかかることを想定し、余裕をもって行動したいですね。
自作教材について
先ほど自作の教材について少し触れましたが、みなさんは「自作」と聞くと、どのような教材が浮かびますか?フラッシュカードのようなものでしょうか。カード系は、既存のものがたくさんありますが、担当する教師のプロフィールに関連したものや、ご当地ネタを盛り込んだものを自作する人もいます。
代表的なのが、所属する学校の地域に関連した名産物の絵カードなどです。既存の教材を参考に、より親しみやすいものに応用するといったやり方です。学習者が興味を持って自発的に質問をしてくるなどのアクションが期待できます。
一方、既存の教材についても、ありのまま使用すれば良いというわけではないようです。どういうことかと言うと、使用目的に応じて不要な部分は削り、足りない部分は自作補強するなど、教師自身がアレンジして使っていくと良いでしょう。
重要なのは、その副教材を使用することで、学習者はどんなことができるようになるか、どんな意義があるのかを常に意識することです。 こうした教材の活用で、授業が盛り上がるのはいいことですが、積極的に発言する学習者と、そうでない学習者が目立ってしまう問題については十分に留意する必要があります。
クラスで取り残されたような感覚を持ってしまうと、学校へ来るのも嫌になったり、そもそも日本語を勉強する意欲が失われたりしてしまいます。教師は、自分の準備した授業が受け入れられたかだけでなく、クラス全体の様子もよく観察し改善していくべきです。
副教材として動画を選択することについて
はじめに、副教材にどんなものがあるかご紹介しました。その中に「動画」を入れましたが、これは会話練習や導入に使用するものです。日本人が話す自然な日本語を習得したい学習者は多くいます。
そのため、学習者自らがドラマやYouTubeの動画を持ってきて「これはどういう意味ですか?」「この表現の使い方を練習したいです。」とリクエストしてくることもしばしばあります。 実際にYouTubeの動画を見せて、シチュエーションを理解し、キーワードを変えて演習するなどの活用は効果的だと思います。
人気の日本人のYouTuberを選ぶなど、工夫して興味を持てるようにしてもいいと思います。授業中だけでなく、プライベートでも日本語の動画を見るようになればリスニング力も伸びるでしょう。そういった意味では、InstagramやTwitterなどのSNSも、日本語のライブを視聴して、日本語でコメントをするなど、日本語学習に活用できそうです。
このように最近は、副教材の在り方も変わってきているように感じます。副教材としてサブのテキストやアナログのフラッシュカード、それに加えて、教室のスクリーンと個人のスマートフォンを使用した日本語ゲームやYouTube等の動画、SNSなどのデジタル副教材もうまく組み合わせれば、より理解しやすく楽しい授業を作ることも可能なのではないでしょうか。
生の教材について
学習者自身の生活に関連したものを持ってきてもらい、それを副教材として使用する方法もあります。例えば「自治体からのお知らせのプリント」を学校で教師と一緒に読んでみる、分からないところは質問する、もしくは自分たちで調べて考えてみるなど、実生活に直接関わるので興味を持ちやすいはずです。
その他にも「好きなお菓子や食品のパッケージ」を持参して、書かれていることを理解し、それをもとに自分の意見を発表するといった演習ができます。 メインの文法を解説する教科書だけでは足りないとき、生の教材を使用して練習や応用を行うことで、インパクトとともに定着が期待できます。
まとめ
以上、まずは副教材の役割を解説しました。主教材だけではカバーしきれない部分の補強を行うのが副教材です。そして、実際に日本語教師が副教材として使っている3冊のテキストの紹介や、授業に取り入れる際にはその副教材がどのような効果を果たすのかなど、心掛けていることを見てきました。
現役の日本語教師の意見は説得力があります。また、学習者が興味を持ちやすい自作教材を、例を交えて紹介し、日本語教師が教材の過不足を調整する必要性も考えてみました。
副教材としてYouTubeなどの動画や生の教材を使用することで、リスニング力や意欲の向上が期待できるのではないかということも述べました。