【私の流儀#14】若林佐恵里さん(日本語教師兼ライター)

日本語教師として活躍されている方にお話を伺う「私の流儀」。

本日は、日本語教師兼ライターとして活躍されている、若林佐恵里さんにお話を伺いました。

プロフィール
大学卒業後、食品メーカーに就職し、デパートで和菓子販売を担当。

そのときに出会ったイタリア帰りの短期アルバイトの方の「自分のやりたいことをやるべき」という言葉が強く印象に残り、ずっと挑戦したいと思っていた日本語教師を目指すことを決意。

食品メーカーを退職し、京都市内の会社で契約社員として働きながら、養成講座に通う。
修了後、中国の高校で日本語教師としてデビュー。

中国で約1年勤務し、帰国後は京都の日本語学校で非常勤講師として勤務。
EPA看護師候補生や技能実習生、ビジネスマン、留学生など幅広い学習者に日本語を教えてきた。

現在は日本語教師をはじめとして、日本語教師養成講座講師やライターとしても、京都を拠点に活動中。

日本語教師養成講座420時間修了。
日本語教育能力試験合格。

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目次

日本語教師兼ライターになったきっかけ

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本日はよろしくお願いします!
ライターのお仕事を始めたきっかけを教えてください。

日本語教師のキャリアアップを考えたときに、大学院に行き、大学などで働くというのがひとつの手段ですが、みんながそれをやったら価値が下がってしまいますよね。

そこで、自分だけの働き方、自分がやりたいことをやってみようと思って「書く」ことで仕事をしようと決めました。

日本語もライターも扱っているものは「言葉」です。

そんなとき、たまたまあるメディアがライターを募集していて、そこでライターの仕事を始めました。

今は複数のメディアで執筆の仕事をしています。

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次に日本語教師を目指したきっかけを教えていただけますか?

高校生のときから、英語を使いたいという思いがありました。

いとこがスイス人の友達を連れて来たときに、少し英語で話してみたことがあり「あ、伝わる!おもしろい」と思ったんです。

それをきっかけに、英語や海外にすごく興味を持つようになり、海外にも行きたいと思うようになりました。

でも、英語ができる人は自分以外にもたくさんいるので、難しいと感じていました。

その当時、仲が良かった先生がスペイン語を薦めてくれて、大学はスペイン語学科に進学しました。

日本語教師という仕事があることも耳にしていて、興味を持った矢先「ドク」というドラマの放映が始まりました。

これは日本語教師が主人公のドラマで、香取慎吾さんや菅野美穂さんが学習者役をしているんです。

そのドラマを見て「これがやりたい」と思いました。

大学卒業後に日本語教師になろうと思いましたが、周りに反対され、結果として食品メーカーに就職することになりました。

日本語教師としてのこだわり

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日本語教師として、こだわっていることはありますか?

その人に合わせる」というスタンスを大事にしています。

学習者のレベルやペースに合わせて、その人から会話を引き出すようにしています。

教師が一方的に教えるのではなくて、会話の中で学習者の能力を引き出したいと思っています。

まだ日本語が流暢にできないだけで、どんな人でも伝えたいことは無限にあると思います。

その伝えたいことを、それぞれのレベルに合わせてどうやって引き出すかを常に考えています。

現在の生徒さんについて

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どのような生徒さんに日本語を教えていますか?

プライベートレッスンとグループレッスンで教えたり、地域の日本語教室で教えたりしています。

学習者の国籍とレベルは、さまざまです。

使用している教材

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どのような教材を使って教えていますか?

授業をお願いされた期間やクライアントによって、既成の教科書も使いますが、私が一番やりたいのは、生の教材を使った授業です。

例えば、中級以降のN2レベルくらいから、文庫本を1冊読む授業や、書籍や雑誌や新聞記事、自分が読んでおもしろかったものを使った授業です。

著作権フリーの青空文庫なども、いいですね。

この間は、Voicyを使ってみました。

学習者の興味に合わせて、その人が好きそうなものを選んでいます。

Voicy(ヴォイシー)とは?
株式会社Voicyが運営している音声プラットフォーム。ビジネスの専門家やその道のプロ、ミュージシャンや著名人など、厳選されたパーソナリティによる“声のブログ”やニュース、ラジオのような放送を聴くことができます。

https://voicy.jp/

学習者との思い出

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特に人気のトピックや反応がよかったものはありましたか?

人それぞれなので、ひとつに決めるのは難しいですが、一度、上級クラスの生徒に『走れメロス』を読んでもらったら、難しすぎるという反応が返ってきました。

ただ、時々そういう変わったものもないと、ぴったりフィットするものが見出せないと考えています。

変化球も投げないと、本当にその人が望んでいるものが分からないのだと、そのとき気付きました

印象的な思い出

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生徒さんとの印象的な思い出はありますか?

島国出身のある生徒がいて、日本に来たばかりの頃に日本語学校の初級クラスで教えていました。

その生徒に「島人(しまんちゅ)ぬ宝」という歌を教えてほしいと言われたんです。

そこで、授業のすきま時間を利用して「島人ぬ宝」を歌い歌詞にルビを振ったものを渡しました。

その学生が卒業するときに、みんなでカラオケに行ったのですが、その学生は「島人ぬ宝」を歌いました。

そのときポケットからボロボロの歌詞の紙が出てきたのです。

授業で配布したものでした。

何度も練習したんだなあということが分かり、すごく嬉しかったです

尊敬する日本語教師

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尊敬する日本語教師の方ははいらっしゃいますか?

春原憲一郎先生です。

春原先生は、みんなに優しい方でした。

言葉というものをすごく追究している、私にとっては唯一無二の存在です。

働くうえでの喜びと苦労

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日本語教師として働くうえでの喜びを教えてください。

未知との遭遇」です。

地域の日本語教室に教えに行っているのですが、ある釣り好きな学習者がいて、自分で海で釣ったものを食べているそうです。

スズキがよく釣れるらしく、そのスズキを焼いて食べるとおいしいのだそうです。

その生活力がすごいと思います。

アナゴもよく釣れるらしいのですが、彼はアナゴを食べないので、その場で日本人の釣り人にあげるそうです。

まさに「未知との遭遇」だなあと思います。

毎日新しい価値観と出会えるところで自分は生きているのだと、改めて思いました。

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苦労はありますか?

お金や生活の不安定さです。

専任や大学教員になれば別ですが、ほとんどの人はそうではないので大変だと思います。

日本語教師には非常勤やフリーランスという形態の方が多いですが、非常勤の掛け持ちは本当に不安定で、地位が低いです。

また「主婦だからできること」といったイメージでしか見られないというのも歯がゆいです。

どんなに楽しい授業を提供していても、それが成果として認められなかったり、金額や生活の安定として現れてこないことは、本当に苦しいことだと思います。

ただし、苦労といえばこれくらいで、あとは全部本当に楽しい仕事だと思っています。

これからの日本語教育について

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業界的な展望を聞かせてください。

難しいテーマですが、教養として学ぶ人と労働・生活するために学ぶ人の二極化だと思います。

これからは、日本語学校で留学生に教えることは少なくなっていくのかなと感じています。

特定技能など労働者として働く人のために教える場がひとつで、もうひとつはアニメなど人生の楽しみとして学ぶ人に教える場です。

私が教えている生徒の中でも、この二極化を感じています。

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個人の目標はありますか?

日本語教師は「日本はこうです」と言って、言葉や文化をしっかり教えたいと思ってしまいがちです。

しかし、日本語教師を16年やっているうちに、そんなことはあまり関係なく「人間としてみんな同じ」という思いを抱くようになりました。

この思いは、日本語教師の仕事を通じて学んだことでもあります。

ともに学ぶ人に「人間としてみんな同じ」と気付いてもらえるような授業を心がけています。

自分らしい働き方とは?

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どんな働き方が自分らしいと思いますか?

働くのが好きなので、今までついつい予定を入れて、時間が許す限り忙しくしてしまっていましたが、できる範囲でできることをやるという考えに変わってきています。

80歳くらいまで仕事ができるように、健康に注意しながらペース配分をして、ゆっくり働きたいと思っています。

日本語教師の魅力

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日本語教師という仕事の魅力を教えてください。

誰でもなれる、誰でもできる」というところです。

日本語教育は、間口が広い業界です。

例えば、資格がなくても飛行機で隣に座った人にも教えることができますよね。

間口が広いと同時に、日本語教育学という学問として、専門性を深めることも可能です。

よく考えてみると、食べ物もそうです。

お母さんが作ったお弁当を500円で売ることは、どこでも誰にでもできることですが、飲食業界には3つ星シェフもいます。

例えば、おにぎりを握って100円で売ることも仕事ですが、料亭で何十万円の料理を出すことも仕事です。

食べ物の仕事もとても間口が広いです。

食べ物と同じように、人間にとっては言葉も必要なものだから、間口が広く、さらに深くなっている、その二面性が魅力だと思います。

日本語教師としての強み

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日本語教師としてのご自身の強みはありますか?

私は読んだり書いたりすることが好きなので、それを活かした授業ができることです。

自分の読んだ本を使って授業をしたり、文章を書く練習をしたりすることができます。

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