初中上級の担当教師

みなさんこんにちは。日本語学校のクラスは初級・中級・上級と分かれています。それぞれを担当する教師はどのように決まっているのでしょうか。「初級はベテランの先生が担当して、中上級が比較的経歴の浅い先生が担当しているのでは?」と思っていませんか?また、あなたが先生方を割り振るならどうしますか?実は、学校の都合上、勤務可能なシフトで決まることもあります。また、海外の日本語学校も少し事情が違うようです。例を紹介しながら、日本語学校のリアルについて見ていきましょう。

目次

教員の授業数について

教員の1週間あたりの担当する授業時間について、「日本語教育機関の告示」によって以下のように定められています。

「十四 教員の1週間当たりの授業担当時間数が、その指導経験及び当該日本語教育機関における職務内容の状況に応じて定められ、かつ、25単位時間を超えていないこと。」

そして、指導経験や職務内容によっても決まりがあります。

(1)教員(日本語指導歴1年以上の者。) 25単位時間

(2)教員(日本語指導歴1年未満の者。) 20単位時間

(3)主任教員 20単位時間

(4)校長または副校長と主任教員を兼ねる者 16単位時間

なお、25単位時間を超えない範囲とは、1機関内での上限である。

つまり、日本語指導歴が1年未満の教師が多いと、雇用する教師の数を増やさなくてはなりません。

ベテラン教師や中堅どころ、新人教師などがバランスよく在籍しているのが良い日本語学校といえるのでしょうか?初級・中級・上級のクラスはそれぞれどんな教師が適していると思いますか?初級から見ていきましょう。

初級を担当する教師

初級の学生の目標は「日常の簡単な話題を理解したり、自分のことを表現したりできるレベルになること(JLPT N5~N4レベル)」です。0から教える初級はいちばん難しいと言われていますので、経験豊富なベテランの教師が向いているといった見方もできます。

中級を担当する教師

中級の目指すところは「自分の関心がある話題について聞き、自分の意見を表現できるようになること(JLPT N3~N2レベル)」です。加えて、本格的な試験対策も始まります。読解、聴解、作文などを指導できる教師が担当するのが望ましいです。また、基本もしっかりおさえつつ、点を取る方法も教えられる教師が求められます。

上級を担当する教師

上級は、大学や大学院、専門学校など進学を目指す学生も多いのが特徴です。上級の学生の目指すところは「社会的な問題も含む広い話題を理解し、日本語母語話者と流暢にコミュニケーションを取れること(JLPT N2~N1レベル)です。上級レベルの学生からは難しい質問をされることもしばしばあるため、担当の教師にはしっかりした知識と説明力が必要です。

レベルごとの理想の教師像を見てきました。では実際の日本語学校ではどうでしょうか?

国内日本語学校と海外日本語学校

日本国内の日本語学校について

ある国内の日本語学校では、授業に入ることができるシフトによって担当するクラスが決まるようです。教師の指導歴などは重要視していない場合もあるということです。これは日本語学校を運営していく面では仕方のないことなのかもしれません。最初に述べた、各教員の1週間あたりの授業担当時間数も関係してのクラス分けということも考えられます。その中で日本語教師は、どのレベルでも十分に対応できるスキルを持っていたいものです。

海外の日本語学校について

国内の日本語学校と海外の日本語学校では、事情が少し違います。

海外の場合、学生の母語で授業ができるというメリットもあるため、初級などは現地の日本語のネイティブでない教師(その国出身の教師)が担当することもあります自分の国で少し基本を勉強してから、日本に留学したいという人もいます。そのおかげもあってか、日本国内の日本語学校では、日本人のネイティブ教師が基本的にはすべて日本語で授業をすることができています。

海外のある日本語学校の例

アジアのある日本語学校でのクラスについて見ていきましょう。

こちらの学校では、初級は現地の教師が担当し、ある程度の日本語能力(N3程度)が身についてくると日本人教師の授業に参加する人が多いようです。ですが、一応、学生が希望すれば、どのクラスにも参加できるというスタイルの学校です。日本人教師の授業では、すべて日本語で教えています。学校が独自で作成した教科書があり、初級クラスはそれを使います。また、中上級以上では、検定の授業以外は特に決まった教科書がないため、教師が自由に教材を選んでいます。授業に教師の色が濃く表れそうです。自作の教材を使って学生の反応を見ることができるため、日本語教師自身の勉強にもなると思います。

このように、比較的自由なやり方を採用している学校も、海外ではちらほら見受けられます。

国内と海外の比較

海外の学校では、初級クラスでその国の言葉で日本語を解説するスタイルを採用している場合もありました。媒介語を使って日本語を教える間接法と、日本語で日本語を教える直接法を組み合わせている点が、海外日本語学校の強みと言えるのではないでしょうか。例として、みなさんも初めて英語などの外国語を学ぶとき、自分の母語で解説してもらったら勉強を始めやすいのではないでしょうか?また、現地の教師が教えてくれると、学習を始めやすいといったメリットを感じる人もいるかもしれません。いざとなったら母語が通じる安心感があります。

日本語教師も、日本語学習者がはじめて日本語に触れるときの気持ちを味わう意味で、ヒンディー語やミャンマー語など文字が難しい言語を勉強してみると、新たな発見があるかもしれません。学校で習った英語だけでなく、趣味などの自分の言語学習の経験が、日本語教育に役に立つことは珍しくありません。学習者の立場に立って考えることができるようになります。

一方、国内日本語学校で、初級から日本人のネイティブ教師が日本語のみで授業を行うメリットももちろんあります。まず、クラスメイトに他国の学生もいるため、必然的に日本語が共通語になります。休み時間などに授業で習った表現をクラスメイトに使い、自然にアウトプットをしたり、日本人の教師と話してみたりと、より実践的に日本語を身に付けることができます。

まとめ

以上、まずは初級・中級・上級の目指すレベルから、それぞれに適した教師像を考えてみました。そして、海外の日本語学校ではどのように担当する教師を分けているのか、また国内の日本語学校との違いを見てきました。それぞれメリットがありました。 あわせて、実際には現実的に勤務できるシフトによって担当クラスが決まっているなど、日本語学校の実態が少し見えました。比較的経歴が浅い教師だと、割り当てられたクラスが自分の不得意分野であったり、教えたことのないレベルであったりという場合もあり得ます。それでも、日本語教師は学生と向き合い、教材や授業の研究をしたり、ときには先輩にアドバイスをもらったりと日々奮闘しています。 日本語を教えていく中で、学生の「なるほど、わかった!」という反応が一番嬉しいものです。日本語教師を目指している人も現役の日本語教師の人も、なんとなく日本国内・海外の日本語学校で働く場合に担当するクラスのイメージがついたのではないでしょうか。あなたならどのレベルを担当して、どんな授業をしたいですか?

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