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日本語教育トピックス

byマガジン編集部 マガジン編集部

日本語学校の新しい日常

新型コロナウイルスの影響により、予定通りの時期に留学生が来日できず、受け入れや授業の体制を工夫している学校がほとんどだと思います。日本の入国規制措置やEJU(日本留学試験)などの様子とあわせて、コロナ禍の日本語学校の日常について見ていきたいと思います。

 

入国規制や留学生をめぐる現状

日本への入国規制

令和3年6月1日現在、上陸の申請日前14日以内に、159の国・地域における滞在歴がある外国人について、特段の事情がない限り、上陸を拒否することとされています。この特段の事情というのは、日本人・永住者の配偶者または子の新規入国の場合や、オリンピックのように入国目的に公益性が認められる場合などです。

入国できる場合でも、防疫措置として、出国前72時間以内の新型コロナウイルス検査証明の取得、入国時の検疫での抗原定量検査、14日間の自宅等待機・公共交通機関不使用要請等、厳しい条件が課されています。

 

参考:出入国在留管理庁「新型コロナウイルス感染症の感染拡大に係る上陸拒否措置等及び国際的な人の往来の再開の状況(概要)」

http://www.moj.go.jp/isa/content/001347329.pdf

 

留学生数の減少

文部科学省が2021年3月30日に発表した「『外国人留学生在籍状況調査』及び『日本人の海外留学者数』等について」によると、2020年5月1日現在の外国人留学生数は279,597人で、前年(2019年5月1日)比で32,617人(10.4%)の減少となりました。これには、新型コロナウイルスの影響により、予定していた時期の渡日ができず、やむなく海外現地でオンライン授業等を受講していた学生も含まれています。また、教育機関別で見ても、日本語教育機関に在籍する外国人留学生数は60,814人で、前年から22,997人(27.4%)の減少となっています。

 

2020年10月には、ビジネス関係者、医療や教育関係者、留学生など中長期の在留資格を持つ外国人を対象に、一時的に入国規制が緩和されました。そのため、日本政府観光局が2020年11月18日に発表した10月の訪日外国人数(推計値)は、前月の1万3,700人から倍増し、2万7,400人でした。しかし、前年同月比ではなんと98.9%の減少でした。訪日外国人数はビジネスや飛行機の乗り換えなども含めた総数であるため、留学生はさらにこの一部であり、一時的な規制緩和では、日本語学校の入学者数が以前のように戻るとは言い難いです。昨年から今年にかけて、日本語学校の留学生確保は困難を極めています。

 

参考:

独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「2020(令和2)年度外国人留学生在籍状況調査」

https://www.jasso.go.jp/about/information/press/jp2021033001.html

 

時事ドットコムニュース「10月訪日客、2万7000人 入国制限緩和で前月から倍増」

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020111800901&g=eco

 

代えのきかない留学試験

日本の大学などへ留学を希望する場合は、毎年6月と11月の年2回開催されるEJU(日本留学試験)を受けなければなりません。EJUは日本国内だけでなく海外でも受験することができますが、2020年と2021年はどの地域でも相次いで中止となりました。EJUが実施されなかったり受験できなかったりした場合、JLPT(日本語能力試験)の成績を代替とできる大学も存在しますが、昨年と今年はJLPTも多くの会場で中止となったため、大学進学の選択肢が奪われることとなってしまいました。

 

 

韓国の受験生の声

NHK NEWS WEBで、日本の大学への留学を目指す韓国の受験生たちから聞こえた不安の声に関する記事を見つけました。

 

韓国にある日本の大学などへの進学をサポートする塾によると、韓国にいる受験生が日本の大学を目指す場合、日本の会場での受験が必要となるケースが少なくなく、新型コロナウイルスで入国制限されて以降、受験生が来日できずに試験が受けられないケースが相次いでいるそうです。

 

また、韓国の受験生が日本で試験を受ける際には短期滞在で来日するケースが多いとのことですが、2020年10月の措置ではビジネス目的以外での短期滞在は対象になっていなかったため、受験生の多くが不安を募らせました。日本の大学への進学を目指して韓国国内で受験勉強をしているという、19歳の受験生は来日できずに、前月に行われた第1志望の大学の試験を受けることができなかったということです。

 

ある学生は「留学は自分の夢をかなえるための最初のボタンかけだと思っています。去年は準備が足りず、この大学のために浪人を決めてやってきたので試すこともできずに終わり、やるせない気持ちです。観光などの短期滞在を緩和することは世論や国民の不安もあり、難しいとは思いますが、受験生が試験を受けられるよう、学校側が試験の時期を延期したり、オンライン試験に切り替えたりするなどの配慮を期待しています」と話していたそうです。

 

思うように留学生の受け入れや授業ができずに、もどかしく悔しい思いをしているのは、日本語教師だけではありません。日本への留学をめざして努力してきた学生たちも、不安や葛藤を抱えています。

 

参考:NHK NEWS WEB「入国制限措置 きょうから緩和 留学生『うれしい気持ち』」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201001/k10012642951000.html

 

日本語学校の授業の様子

国内の日本語学校はオンライン授業で対応

これまで見てきた通り、留学生が来日することが難しい状況が続いているため、日本語学校は積極的にオンライン授業を活用して、母国で待機する学生に授業を提供しています。

 

JELLYFISHが2020年9月11日に発表した「オンライン授業の実施状況アンケート」の結果によると、「これまでにオンライン授業を行ったことがある」という回答は81.8%に達したそうです。この調査は、日本語学校関係者のうち、同社主催の日本語学校向けセミナーの参加者を対象に、7月31日~8月18日の期間に行われ、55校64名から回答を得ています。

 

オンライン授業の実施対象は、「在校生」が84.4%、「入国待機生」は55.5%となっており、在校生に比べると少ないものの、入国制限によって母国に待機している学生にもオンライン授業が行われていることが分かります。オンライン授業の実施にあたって困ったことを尋ねた質問(複数回答)では、「学生のネット環境」(64.1%)が最多で、「教材の作成、準備」(56.6%)、「教師がオンライン授業に慣れていない」(50.9%)、「カリキュラムの作成」(33.9%)がそれに続くという結果でした。主だった理由4つのうち、3つが教師側の準備に関する問題となりました。

 

参考:EdTechZine「日本語学校の8割がオンライン授業を実施、学生のネット環境に課題も」

https://edtechzine.jp/article/detail/4440

 

上記のアンケート結果では、オンライン授業に対する日本語教師の悩みや苦労も感じられましたが、オンライン授業の開始から約1年が経った今、筆者の周りの日本語教師は、それぞれの学校のオンライン授業のやり方に順応しスキルを上げていらっしゃる印象です。現役の日本語教師からは以下のような声がありました。

 

・学生がオンラインと対面の両方で参加するクラスの担任をしています。オンラインの学生は今年入学の入国できないメンバーです。

 

・オンラインと対面を同時に行うので、Zoomでパワーポイントを画面共有して、対面の学生とオンラインの学生に会話練習をさせながら進めています。そのため、教材はパワーポイント中心でペーパーレス化をめざしています。

 

・ZoomやGoogle Classroomといったツールは何度も使ってきましたが、中国に関してはそのどちらも使用することができないので、通称「北京式」というものとdingtalkという2つのシステムを使います。初めからe教育のために作られているシステムのようです。

 

海外の日本語学校はネット環境の問題も

ニッケイ新聞に、ブラジルの日本語学校の様子について書かれた記事がありました。

 

日伯文化連盟(アリアンサ)は、日本語学校を3校運営していましたが、昨年8月から今年5月にかけて2校を閉鎖し、現在はピニェイロス文化センター1校のみになったそうです。同校は、この災禍で昨年3月から急遽授業をすべてオンライン化したが、生徒の学習環境の問題などで1,500人ほどいた生徒が700人まで激減したといいます。

 

ピニェイロス文化センターの校長は「コロナ禍に対応し急遽オンライン化を行いましたが、ついていけない高齢の受講者や、家にパソコンが1台しかなく自宅でオンライン授業を受ける子供と授業時間が重なったことなどが理由で生徒が激減しました」と生徒減少の理由を語ります。また、「自粛が少し緩和された現在、感染防止措置に務めながら対面授業を再開したい思いはあります。ただ、このピニェイロス校は教室が7部屋、通常各部屋に15人しか入れず、感染対策で人間距離を取ると7人以下しか収容できません。現在日本語教師は23人しかいないので少人数授業を行うと人手が足りません。会話の練習でオンラインと対面を組み合わせたハイブリッド授業ができるかと言われれば管理が難しいです。かといって教師を増やせる程の財政的余裕もないといった状態です」とパンデミック中の運営の難しさも語りました。

 

海外の場合は、オンライン授業の実施にあたって、依然としてネット環境の不備や日本語教師不足といった問題があることが分かります。日本国内の学校に比べると、物理的な問題だと言えます。

 

参考:ニッケイ新聞「アリアンサ=コロナ禍で生徒数半減の危機=校舎閉鎖、3校から1校に=手探りでオンライン化するも」

https://www.nikkeyshimbun.jp/2021/210610-21colonia.html

 

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「言葉を教え、文化を広げ、異文化に橋を架けよう」というサービス理念のもと、国内・海外に日本語教育を展開している会社です。日本語を学び、日本語を使い、日本語でつながり、夢を実現するまでの教育を行っています。

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