日本語教育ニュースの特集

2019年~2021年の日本語教育に関する重要なトピックをまとめました。日本語教育の現状について知る手助けとなれば幸いです。

目次

日本語能力を測る新しい試験「JFT-Basic」

国際交流基金は、「JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)」を2021年3月に日本国内で初めて実施します。2021年度より年に6回の実施が予定されています。

 

2019年4月以降、すでに海外(モンゴル、インドネシア、カンボジア、タイ、フィリピン、ミャンマー、ネパール)で実施されていて、2020年12月9日時点で1万4,900人が受験しました。2019年4月に創設された新しい在留資格である「特定技能1号」の取得に必要な日本語能力の証明にも活用されています。「JFT-Basic」が普及して合格者が増えることで、外国人の就労機会がさらに増加することが期待されます。

 

「JFT-Basic」は、日本語を母語としない外国人、その中でも、主として就労のために来日する外国人を対象とし、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定することを目的としています。問題は、「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」の4セクションにより構成されます。テスト会場で、個人ごとに仕切られたブースに入って受験します。問題がコンピューターの画面に表示され、ヘッドホンには音声が流れるので、コンピューターの画面上で解答します。

 

すでに「JFT-Basic」の対策講座を無料で配信したり、教師とのオンライン練習を提供したりしている企業もあります。

 

参考:「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic) 3月から日本国内でも実施開始」

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000041433.html

新しい在留資格「特定技能」

上記の「JFT-basic」の記事でも触れましたが、2019年4月に「特定技能」という新たな在留資格が創設されました。介護、建設、農業、外食業など、日本人の労働者不足が深刻化している14の産業分野において、即戦力となる一定の専門性と日本語能力を有した外国人を受け入れていくものです。

 

特定技能の在留資格には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。特定技能1号の在留期間は通算5年で、家族の帯同は認められていません。特定技能2号では、より熟達した技能と日本語が必要とされます。2号は在留期間に上限がなく、家族の帯同も可能です。しかし、現状ではどの業種でも実績は無く、2021年度に建設業と造船・舶用工業の2業種にて試験をスタートする予定です。

 

特定技能ビザは基本的に国籍に制限なく取得可能ですが、悪質なブローカー排除のために二国間協定を締結した国で試験が実施されており、2021年1月時点で、フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インドの13ヶ国です。

 

参考:出入国在留管理庁

http://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri05_00021.html

 

政府は、制度開始から5年間で最大約34万5千人、初年度で最大4万人程度を見込んでいましたが、2019年12月末時点では1,621人にとどまりました。最も多いのが飲食料品製造業で557人、次に農業で292人、産業機械製造業で198人でした。国籍別に見ると、ベトナムが901人、次いでインドネシアが189人、フィリピンが111人でした。

 

そのため、政府は、国内の試験の受験機会の拡大や取得者を企業に仲介する制度の拡充といった対策を打ち出しました。これまでの受験資格は中長期滞在者等に限られていましたが、受験を目的に訪日した短期滞在者にも拡大されました。さらに、特定技能ビザ取得者と企業をつなぐ「マッチング支援」を柱に据え、介護分野で仲介に取り組む地方自治体への財政支援、建設分野で法人を通じた求人求職のあっせんなどを本格化しました。

 

上記の対策に加え、制度の周知が進み、技能実習からの切り替えが多かったことも影響して、特定技能での在留者数は2020年12月末時点で15,663人となりました。業種別では飲食料品製造業が5,764人と最多で、次いで農業の2,387人、建設の1,319人の順でした。国籍別に見ると、ベトナムが9,412人と6割を占め、中国*が1,575人、インドネシアが1,514人と続きました。

 

*中国との二国間協定は2019年6月時点で合意に至ったことが発表されましたが、2021年2月時点において締結には至っていません。

 

参考:日本経済新聞「外国人「特定技能」広がらず、政府が受験機会拡大へ」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53596910Q9A221C1EA3000/

 

参考:出入国在留管理庁 特定技能1号在留外国人数 令和2年12月末

http://www.moj.go.jp/isa/content/001341039.pdf

コロナ禍の日本語学校

新型コロナウイルス対策の入国制限で、留学生が入国できず、日本語学校の経営が苦境に陥っています。今年度の留学予定者が来日できず、新年度の入学希望者も急減している学校が多いのが現状です。

 

2020年10月にビジネスや留学などの中長期の滞在資格を持つ外国人の入国制限が緩和されましたが、それでも、入学できたのは予定の半数であったり数人しかいなかったりという学校が目立ちます。学生が少ないと、友達作りやグループ活動ができず、日本語の授業にも影響が出てきます。入国のタイミングを待って母国で待機している学生に関しては、学習意欲を維持してもらうために、学校はオンラインでの授業や会話練習を提供するなど工夫している教育機関もあります。

 

2021年1月14日に再び全面的な入国制限が始まり、日本語学校にとって大きな痛手となっています。2021年においてもコロナ禍が収まらず安定した入学者数を確保できない場合、教師の人件費、教室や寮の管理費が捻出できず、経営がいよいよ厳しくなってきます。

 

そんな中、新たな事業軸を探る動きもあるようです。「技能実習」や「特定技能」の在留資格ですでに国内で働いている外国人を対象にした日本語研修や試験対策を実施する日本語学校があります。苦境を工夫で乗り切れるかどうか、日本語学校の力が試されています。

 

参考:朝日新聞デジタル「日本語学校が危機 コロナで学生来日できず「閉校も…」」

https://www.asahi.com/articles/ASP2N6H8XP1WPTIL023.html

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