日本語教師の給料は本当に安い?国内・海外の状況を徹底解説!

日本語教師を目指している方が将来のキャリアパスや就職事情について調べたときに、一番目につくのは「給料の安さ」です。

実際に日本語教師として活躍されている方々も、給料の安さについては嘆いている方が多くいらっしゃいます。

それはなぜでしょうか?

今回の記事では、日本語教師を目指すにあたって理解しておくべき教師の経済事情と、国内と海外の違いについて考察します。

目次

【アジア圏で働く】求人票から年収を試算

一般的に安いと言われている日本語教師の年収ですが、実際はどのくらいなのでしょうか

募集されている求人情報から、年収を試算してみました(2021年現在のレート)。

中国

勤務条件
基本は月〜金曜日の週5日出勤
土日休み(中国の祝祭日も休み
年に約2ヶ月分の夏休みと冬休み(有給)

賃金
月給13,000元以上(経験・能力により決定)
校内の食堂で1日3食無料

帰国手当
満1年に1回支給(3,500元まで)

保険
別途支給

1元は約16円ですので、月給換算で20万8千円、年収換算で約250万円です。

2020年に、中国の大都市圏で働く中高度人材の平均年収が300万円を越えたというニュースが出ていましたので、それよりは少し低いというイメージでしょうか。

ベトナム

勤務条件
就業時間は40時間/週で11コマ(7:30~11:00/13:30~16:30)に相当
休日は原則土曜日の午後と日曜日

賃金
月給約900USドル(経験・能力により優遇)

往復航空代
・年1回往復航空券運賃を支給

住居
住居無料提供(家具付き)
光熱費無料

保険
健康保険の半額を大学が負担

USドルは約111円ですので、月給で約10万円、年収換算で約120万円です。

2017年のベトナムの統計総局のデータによれば、ホーチミンの平均月収は約48,900円ということですので、年収換算で約60万円です。

家賃・光熱費の自己負担なしということを考えると、かなり高額の給料であることがわかります。

マレーシア

勤務条件
終業時間は1日8.5時間、週5日勤務
完全週休2日制
週に20~25時間の授業を担当

賃金
月給4,000リンギット
所得税は学校負担
マレーシアには住民税はありません

住居
・学校が提供
家賃は定額自己負担

賞与
年1回

マレーシアの通貨・リンギット(RM)は約26円ですので、月給で約10万円、年収換算で約120万円です。

マレーシア統計庁が2019年に公表した給与所得の賃金データによると、給与所得者の平均月収は、3,087リンギット(約77,700円)、年収換算で約100万円です。

2018年の前回調査時から、7.0%という大幅な伸び率です。

平均年収よりは高い賃金であることがわかります。

タイ

勤務条件
週5日出勤

賃金
シニアクラスで月給90,000バーツ〜120,000バーツ
ジュニアクラスで月給30,000バーツ〜50,000バーツ

住居
寮を有料で紹介
月額5,000 バーツ(光熱費別

タイの通貨・バーツは約3.5円ですので、月給で約10万円~35万円、年収換算で約120万円~420万円です。

タイ国家統計局(2017年)によると、タイ・バンコクの平均月収は41,897バーツ(146,639円)、年収換算で約175万円です。

平均年収よりは高い賃金であることがわかります。

まとめ

アジア圏の経済は激しい勢いで成長していますが、まだ日本よりは給与水準が低いので、日本の感覚で見ると年収は安く見えます。

しかし、各国の平均年収などを調べるとわかるように、現地の給与水準から考えると、日本語教師は決して給料の安い職業ではありません

日本語教師の海外ニーズがアジア圏で多いという状況はしばらく変わらないと思います。

日本に帰国したあとの資金を貯蓄したいという考えがあるのであれば、海外での勤務は避けたほうがよいでしょう。

逆に、現地での長期滞在が前提であれば、特に雇用条件が悪いということはないので、平均水準以上の生活は確保することができます。

【日本で働く場合】求人票から年収を試算

語学学校・常勤講師

給与・報酬
月給28万円〜35万円
年収換算で約350万円~450万円

厚生労働省が発表した令和元年賃金構造基本統計調査では、日本の全年齢の年収の中央値は240万円~456万円だと発表されています。

その金額を基準に考えますと、日本語教師の賃金はまさに平均的な年収と言えるでしょう。

専門学校・常勤講師

給与・報酬
年収換算で約350万円~549万円

語学学校・非常勤講師

給与・報酬
1コマ(45分):2,400円~2,666円

大学・非常勤講師

給与・報酬
1コマ(45分):1,800円~2,500円

まとめ

求人情報を見ると、常勤講師として採用されるか、非常勤やパートタイムで採用されるかで大きく給与事情は違ってくるようです。

比較対象として、同じ教育者である小中高の教諭の年収を調べてみますと、平均月収は30万円弱で平均年収は約350万円です。

小中高の正規雇用に限定しますと、平均年収は約400万円となります。

上記の情報から考えると、常勤で採用されれば、日本語教師が他の教職と比べて、特別に年収が低いということはなさそうです

ちなみに、小中高の教諭も非正規雇用の場合の平均年収は約280万円ですので、正規雇用と比べて年収で約120万円、月収で約10万円もの開きがあります。

そのことから、どの教育現場も同じ問題を抱えていることがわかります。

日本語教師の年収が安いといわれる理由は非常勤雇用の多さにあ

「平成30年度 日本語教育機関実態調査」によると、日本語教師の約70%が非常勤として働いています。

一般財団法人・日本語教育振興協会「日本語教育機関の概況」によると、日本語教育機関で学ぶ学生数が、平成3年度の3万5千人から平成27年度には5万人を超えたにも関わらず、常勤講師の数は増えていません。

非正規教員の増加が問題となっている国内の公立小・中学校の教員の、非正規教員が占める割合は16.1%(2012年)ですので、日本語教師の非常勤雇用の多さがわかると思います。

参考:
日本労働研究雑誌「【特集】「先生」の働き方:教師の世界
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2014/04/pdf/042-045.pdf

雇用側は、毎年確実に同じ数の生徒が確保できるわけではないので、常勤講師より非常勤講師のほうが融通が効くという面で重宝されます。

また、雇用側は非常勤でも講師を確保しやすいという社会環境も大きく影響しています。

それは、日本語教師は生涯の職業として選択している方ばかりではなく「やりがい」を求め、ある程度自分の時間を確保しながら「自分らしく」働きたい、配偶者控除が受けられる年収103万円の範囲内で働きたい、といった考えの日本語教師が多く存在していることに起因しています。

いずれにしても、一般的に日本語教師の新人は、最初は非常勤でスタートし、数年の経験を積まないと常勤になれるチャンスはめぐってこないと言われています。

就職先を決める際、常勤になるための条件などについてよく確認しておくべきでしょう。

参考:
一般財団法人日本語教育振興協会 日本語教育機関の調査・統計データ
https://www.nisshinkyo.org/article/overview.html

法律上の制限という壁

日本語を学びたいと考える外国籍の方の多くは、日本より経済発展が遅れているアジア圏の方々であり、日本で働いてお金を稼ぐことを目的としている方も少なからず存在しています。

経済的に厳しい環境下で学んでいる方が多く、授業料を支払うのが難しいというのが実情です。

悪質な日本語学校の存在により、年々国から日本語学校へ課せられる制限が厳しくなっています。

例えば「教師の1週間当たりの授業担当時間数は、25単位時間を超えてはいけない」などです。

授業のコマ数と対象学生の人数に関しては、厳しい制限が課せられています。

例えば、100人規模の日本語学校で制限を満たすには、下記のような試算となります。

・1教室の定員数が20名×5クラス
・1クラスあたりの授業時間が1日4時間×週5日で、1週間につき20時間

したがって、週に1クラスあたり20時間×5クラスで100時間のコマ数となるので、制限をクリアするためには最低5名の教師が必要です。

さらに、体調不良や休暇の取得なども考慮すると、6名以上が望ましいでしょう。

つまり、自分がいくら質の高い教師になっても、予備校のように1人の先生が1コマで何百人の学生に授業をすることはできませんし、その教師のブランド力で学生が集まるような効果は期待できません。

いくら評価されたとしても、教師1人あたりが稼げる金額は限られてしまうわけです。

日本語学校の学費は、教育期間によって差はありますが、1年で60~90万円ほどです。

仮に70万円とした場合、100人の生徒ですから学費収入は7,000万円となり、上限が決まってしまいます。

家賃と広告費を抑えたとしても、月間200万円ほどはかかりますので、その他諸々の経費を引いてしまうと、おそらく賃金分として残るのは収入の50%程度です。

このような構造上の制限が、日本語教師の収入の増加を妨げている大きな要因です。

まとめ

日本語を学びたい人は増えており、世の中のニーズは高いものの、日本で日本語を学んでいる学生の大半はアジア諸国出身であり、彼らは日本よりも年収が安いところから来ています。

そのため、学費なども彼らが支払える水準に合わせなければなりません。

当然、アジア諸国に赴任して日本語を教える日本語教師も同様です。

法律的な制限もあり、日本語学校の収入が大幅に増えることは期待できません。

その結果、固定費の低い非常勤講師の数を多くせざるを得ないという状況です。

また、地方自治体などでは、日本に在住している外国籍の住民向けの無料の日本語教室などを開催しており、そこでは主にボランティアが日本語を教えています。

そもそも「日本語教師を目指す人はお金よりもやりがいを重視しているはずだ」という周囲からの圧力も無視できない問題です。

このような理由から、常勤教師にならない限り、待遇面には期待できません。

日本語教師を自分の生涯の職業として考えているのであれば、日本語学校の常勤教師になる必要があります。

最初は非常勤教師から始めるケースも多いですが、常勤教師へのキャリアプランがしっかりと考えられている職場かどうかをしっかりと見極めて、就業先を選ぶようにしましょう。

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