日本語教師の養成講座や求人サイトに「海外で働こう」といったキャッチコピーが多いように、海外で働くことを視野に入れている方も多いと思います。この記事では、海外で働く3通りの方法についてまとめました。
1.公的機関の海外プログラムに参加する
外務省など公的機関が主催の海外派遣プログラムでは、現地での身分や生活が保障されている点がメリットです。
国際交流基金(JF)
国際交流基金では、次のような職種を定期または不定期に募集しています。学歴や資格に応じて、様々な選択肢があります。募集がある際は、ウェブサイトに随時募集要項が掲載されますので、要チェックです。
採用情報:https://www.jpf.go.jp/j/about/recruit/index.html
- 日本語上級専門家
日本語教育関連分野で修士号以上の学歴があり、日本語教授経験が10年以上の方が応募可能です。日本語専攻学科や教師養成課程、修士課程などの立ち上げ支援や、中等教育段階での日本語導入支援のほか、現地の日本語教師への助言・指導、カリキュラム編成や教材作成等について支援を行います。また、現地の日本語教師を対象とした研修会の実施、教師間のネットワーク形成、日本語教授法や日本語教材作成に関する助言・指導等を行います。
- 日本語専門家
日本語教育関連分野で修士号以上の学歴があり、日本語教授経験が2年以上の方が応募可能です。派遣先の日本語教育機関の日本語講座の授業を担当するほか、現地の日本語教師への助言・指導、カリキュラム編成や教材作成等について支援を行います。また、現地の日本語教師を対象とした研修会の実施、教師間のネットワーク形成、日本語教授法や日本語教材作成に関する助言・指導等を行います。
- 日本語指導助手
4年制大学卒業以上の学歴があり、日本語教師の資格を持っている方が応募可能です。国際交流基金海外拠点や各国の日本語教育機関において、必要に応じて日本語上級専門家、専門家の指導を受けながら、日本語講座の授業や日本語教育事業を単独ないしチームの一員として担当します。
- EPA日本語講師
4年制大学卒業以上の学歴があり、日本語教師の資格を持っている方が応募可能です。経済連携協定(EPA)により来日を希望するインドネシア人及びフィリピン人看護師・介護福祉士候補者を対象に、初級から中級程度の日本語の授業を担当します。日本から派遣される他の講師やインドネシア人およびフィリピン人の日本語講師と組んで、チームティーチングで授業を進めます。
- 米国若手日本語教員(J-LEAP)
4年制大学卒業以上の学歴と日本語教師の資格、基本的な英語力を持っている方が応募可能です。米国内の初中等教育機関において、ティーチングアシスタントとして同機関の日本語教師とチームティーチングを行います。授業、教材・カリキュラム作成、宿題・テスト評価等の補助活動を行うほか、受入機関や地域における日本文化・社会理解促進に関する活動を行います。
- 日本語パートナーズ
日本語を教えた経験がなくても、日常英会話ができれば応募可能です。現地日本語教師のアシスタントとして授業をサポートしたり、日本文化の紹介を通じて派遣先の生徒や地域の人たちと交流したりすることが任務です。
国際協力機構(JICA)
JICAの海外青年協力隊には「日本語教育隊員」の派遣プログラムがあり、隊員は海外の中学校、高校、大学、専門学校、日系日本語学校等に赴任します。70ヶ国へ3,275人を派遣した実績があります。(2020年3月時点)
募集情報:https://www.jica.go.jp/volunteer/application/index.html
日本語教育に関する知識および技能、同僚と協力してのイベント実施能力、着付けや茶道、書道といった日本文化に関する知識および経験が必要とされます。学習者の母語(現地語)の習得に対する意欲的な姿勢も大切です。
日本語教育隊員の活動は、大きく分けて以下の5つです。
- 日本語、日本文化・日本事情に関わる授業の実施
- 現地人教師の日本語能力向上に向けた支援
- 日本文化祭、スピーチコンテスト等のイベントの企画・実施
- 教材やカリキュラムの作成・改訂
- 現地人教師育成や研修会の実施
2.民間機関の海外派遣プログラムに参加する
1.では公的機関の海外派遣プログラムを紹介しましたが、民間機関を通じても日本語教師として海外へ行くことが可能です。ただし、民間機関は、公的機関の長期派遣とは異なり、インターンシップやボランティアが多いため、日本語教師として正式に働く前に、授業や海外での生活を体験したい方におすすめです。国や滞在期間など選択肢が豊富にあるので、自分に合ったプログラムを見つけやすいと思います。
以下のサイトで、日本語教師のインターンシップやボランティアの情報収集ができます。
- Big Bridge International(BBI):https://www.jt-network.com/step2.htm
3.海外就職をする
中には無資格や未経験でも雇用してもらえるケースもありますが、基本的には、国内で日本語教師になる場合と同じく、以下のいずれかを満たすことが日本語教師の資格となります。ただ、世界的に就労ビザの取得が厳格になってきているので、日本語学校に雇用してもらえても、ビザの取得には4年制大学卒業以上の学歴が必要になることがあります。資格が①と②の方は、よく確認してください。
①日本語教育能力検定試験の合格
②420時間の日本語教師養成講座の修了
③大学または大学院での日本語教育主専攻修了
海外の求人が掲載されているサイト
自身で海外の求人を探される方は、以下のサイトが参考になると思います。また、各養成講座に直接オファーが来ている場合もありますので、講座の掲示板やサイトをよく確認するのがおすすめです。
- 日本語オンライン:http://nihongo-online.jp/net/
- 日本語教師の集い:https://www.e-tsudoi.com/
- 国際日本語研修協会:https://www.ijec.or.jp/
日本語教育がさかんな国
最後に、参考として、日本語学習者数と教師数が多い国を見ていきましょう。日本語学習者数が多い国は、1位から順に、中国、インドネシア、韓国、オーストラリア、タイ、ベトナム、台湾、アメリカ、フィリピン、マレーシアです。教師数が多い国は、中国、韓国、ベトナム、インドネシア、台湾、アメリカ、オーストラリア、タイ、ミャンマー、フィリピンの順です。
中国や韓国については、政治的な関係や学習者の欧米志向により、ニーズは減少しています。日本語教師として就職のチャンスが多いのは東南アジアです。東南アジアからは、技能実習生や特定技能ビザを使って来日する方が多いので、今後も日本語教育が必要とされるでしょう。
参考:国際交流基金 2018年度 海外日本語教育機関調査
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2018/text.pdf