司法試験ほどの量ではありませんが、膨大な範囲が試験対象となっている日本語教育能力検定試験は「いかに必要な知識を記憶できるのか」が合否を分けるポイントです。
「頭が良い人=記憶力の優れた人」というイメージがあると思いますが、一部の大天才を除いて、そもそも記憶力にはほとんど個人差はありません。
実は「長期記憶」として脳に定着させることができる人が「記憶力の良い人」なのです。
もちろん、日本語教育能力検定試験は暗記さえできれば合格できるような試験ではありません。
大きく分類すると、暗記系と理解系(自分の言葉で説明ができるようにする)、そして聴解問題に分かれており、それぞれ対策を立てて勉強する必要があります。
そこで今回の記事では、日本語教育能力検定試験の参考書を手にして「これだけの事を覚えなければいけないのか」と早くも挫折してしまいそうな方に対して「暗記系」というポイントにしぼって、その勉強法を考察していきます。
記憶力とは?
心理学領域では記憶というのは、以下の3つに分類されます。
・感覚記憶
・短期記憶
・長期記憶
感覚記憶や短期記憶はすぐに忘れられてしまうのですが、その一部が長期記憶として貯蔵すべきだと判断され、定着します。
この長期記憶、実は保持時間が長く、さらには容量の大きさに制限がないことが特徴です。
長期記憶を上手に活用することができれば、誰もが記憶力が良い人になりえるというわけです。
記憶する4つのコツ
反復演習で脳をだます
生命の危機に関わる情報(例えば、熱湯に手を入れたらやけどする)は、本能的に長期記憶として貯蔵され、瞬時に引き出せるようになるのですが、この性質を活用したのが反復演習です。
何度も繰り返すことで、この情報は大事な情報であると脳をだまして、長期記憶として貯蔵します。
五感をフル動員する
人には、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚の五感が備わっていますが、この五感をできるだけたくさん使うことで、暗記による学習効率が向上します。
例えば、英語や国語などで本文の内容を記憶したいとき、黙読すると視覚しか使いません。
しかし、音読して耳で聞くことによって、視覚と聴覚を使うことになり、2倍の速さで覚えられます。
視覚と聴覚を使うために、普段の学習ではなるべく声に出して読むことがポイントです。
暗記をする際、ひたすら書いて覚える人もいると思いますが、その際も書くのに合わせて声に出して読むと効果的です。
感情を絡めて記憶する
過去の出来事が思い出として残るのは、感情とセットで記憶されているからです。
感情は、長期記憶として貯蔵すべき情報として認識されています。
これを勉強に取り入れたのが、以下の手法です。
ノートにまとめるときに、自分の理解をまとめるのではなく、人に教えることを意識してまとめるという手法
「どのように説明すれば理解しやすいのか」「うまく説明できたら尊敬されるだろう」と意識することで、そこに感情が生まれます。
つまり、勉強する際に自分が日本語教師になったときのことをイメージすることが、合格につながります。
場所を絡めて記憶する
場所法といって、情報と場所を関連付けて覚える記憶術があります。
例えば、覚えなければならない発音表を洗面所に貼っておいて、毎日毎日繰り返し確認します。
どうしても覚えられない用語や表などは、思い出すきっかけとなる場所を紐付けて覚えると良いでしょう。
用語の暗記は避けて通れない
日本語教育能力検定試験を受けるために、覚えなければならない専門用語は非常に多く、暗記がなかなか大変です。
しかし、暗記する項目が多いということは、裏を返せば、暗記さえしてしまえば得点源にすることが可能だということです。
以下のような愚直な手法は、長期記憶として定着させるのに有効です。
・苦手項目に毎日触れる
・用語集に毎日触れる
アウトプットすると記憶に残りやすいので、以下のような手法もあります。
問題を解いて解説を読み、参考書や用語集で復習した理解過程を、解けなかったことの悔しさなどの感情と一緒にノートにまとめる
必要な勉強量とは?
学んだことを長期記憶として定着させるには、どのくらいの勉強量が必要なのでしょうか?
日本語教育能力検定試験の出題範囲は広いので、一夜漬けでなんとかなる量ではありません。
合格者の方から聞いた話を総合すると、もちろん個人差はありますが、おおよそ下記程度の勉強量を確保する必要があるようです。
理想は6ヶ月以上、最低でも3ヶ月の勉強期間
重要なことは、毎日試験範囲の内容に触れることです。
3ヶ月
2時間×平日5日間+土日どちらかで5時間
6ヶ月
1時間×平日5日間+土日どちらかで3時間
例えば、6ヶ月の勉強スケジュールであれば、以下のようなパターンが考えられます。
1〜3ヶ月目
学習範囲をひととおり網羅する
4〜5ヶ月目
問題集をひたすら解いて、苦手分野の洗い出しと克服を行う
6ヶ月目
過去問をとにかく解きまくる
しかし、経験者に聞くと、過去問を解く時間が足りなかったという声も多いため、過去問にはもう少し余裕を持って時間を割いてもいいかもしれません。
過去問はいつから取り組めばいい?
日本語教育能力検定試験ではどのような問題が出されるのでしょうか?
勉強を始めるうえで、目標となる試験の内容を知るためには、過去問に触れて出題傾向を見ることは大切です。
しかし、本格的にいつから過去問に取り組むのかという話になると別の問題になります。
実は、過去問に関しては、受験経験者は真っ二つに分かれる傾向があります。
・最初から取り組んだ方が良い派
・基礎を学んでから取り組んだ方が良い派
基礎を学んでから取り組んだ方が良い派
基礎を学んでから取り組んだ方が良い派の主張は、以下のとおりです。
・多くの過去問の問題集には解答しか書かれておらず、解説が載っていない
・初めて触れる知識だらけなので、何から学んでよいのかが分からない
・母国語なのでなんとなく正解できる箇所もあり、理解している気になってしまう
問題に正解したとしても、その理由(正解を導いた正確な知識)が分からなければ、再現性がなく、同じような質問がなされたとしても2度目以降は間違ってしまう可能性があります。
だからといって、正解の根拠を質問ごとに調べていては、いつまで経っても勉強は進みません。
出題範囲であるすべての分野に対して、過去問を解いてから学ぶ方法をとると、どのくらいの期間ですべて終えることができるのかを予想するのは、とても難しいです。
多くの方が、限られた勉強期間の中で、計画を立てて勉強を進めていくと思います。
その場合は、基礎固めをしっかりしてから過去問に取り組むのが効率的です。
計画通りに反復して学んでいくことで、記憶を定着化させていくわけです。
基礎力がついたタイミングで実施することによって、実は身についていない基礎知識があることや苦手な分野に気づくことができて、知識の確認にもつながります。
最初から取り組んだ方が良い派
最初から取り組んだ方が良い派の主張は、以下のとおりです。
・出題範囲が広く、覚えることが膨大であるため、参考書を読んでいるだけでは長期記憶に残りにくい
・参考書はストーリー性がなく専門用語ばかりであるため、初心者は基礎を学ぼうと思っても理解できない
どうやら主張の基本は「長期記憶に残る勉強法だから」ということです。
基礎から学ぼうと思っても、参考書を読んでいるだけではいつまで経っても長期記憶にはなりません。
そのうちに記憶力が悪いので勉強しても無駄なのではないか、と感じるようになってしまいます。
それを防ぐために、以下のような感情を絡める手法を用いて、長期記憶に残すというわけです。
その問題を解いたときや解答を理解するために調べていく過程の、感情も含めて記憶させる手法
記憶の定着化が肝
両派とも、過去問を解くことに対して、とても大切に考えていることが分かりました。
最終目標は本番の試験で点数を取ることですから、過去問を解けるようになることとほとんど同義です。
その目標にたどりつくまでのアプローチ方法が人によって違うわけですが、どちらが正解ということではなく、個人の向き不向きの問題です。
結局は、どちらの方法が自分にとって長期記憶として安定させやすいかを判断し、活用法を決めるべきだと思います。
まとめ
特に年齢を重ねてから日本語教師を目指す人にとって「記憶することが膨大にある」ことは最大のネックです。
日本語を教えるためにしっかりと裏付けされた知識が必要であると分かっていても、自分には覚えられないのではないかと感じて、挫折してしまう人も多いでしょう。
そうならないためには、記憶とは何かを理解し、操れるようになることがポイントです。
今回の記事では、日本語教師を目指す人が最初にぶちあたる壁について考察しました。
自分の性格や学習環境に合った学習方法を見つけて、克服する一助になれば幸いです。
参考になるブログ・書籍・YouTube一覧
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【最速】日本語教育能力検定試験に独学で合格する方法【過去問に始まり過去問に終わる】
https://youtu.be/0ClNLcea0Ro