日本語教師になるには、いくつかパターンがあります。
今回の記事では、語学学校で働く日本語教師を目指す場合に、日本語教師養成講座がおすすめな理由について解説します。
日本語教師になるには
もしあなたが日本語教師を目指しているとしたら、下記のいずれかの条件を満たす必要があります。
① 大学の主専攻または副専攻で日本語教育を学んだ者
② 日本語教師養成講座(420時間以上)を修了した者
③ 日本語教育能力検定試験に合格した者
中学生や高校生の場合
今あなたが中学生や高校生だとしたら、①の日本語教育を学べる大学に入学することが望ましいと思います。
理由は2つあります。
1つ目は海外や大学などの教育機関で働く日本語教師になりたいと思ったときに、ビザの関係で、4年制大学以上の学歴を求められることが多いためです。
2つ目は「語学」だけではなく「教育」についても体系的に学ぶことができるからです。
副業的な立ち位置で目指す場合
もし他の職業で就業中であったり、ボランティアで日本語を教えるといった、副業的な立ち位置で日本語教師になりたいと考えるのであれば、③の日本語教育能力検定試験にチャレンジすることをおすすめします。
経済的な負担が軽く、自分自身の空き時間に学ぶことができるからです。
今の仕事を辞めて目指す場合
しかし「今の仕事を辞めて語学学校で働く日本語教師になる」と覚悟を決めているのであれば、②の日本語教師養成講座の受講をおすすめします。
日本語教師養成講座を活用するメリット
自分の努力で確実に権利を得ることができる
日本語教師養成講座を活用する最大のメリットは、努力して修了さえすれば、日本語教師の採用条件を必ず満たすことができる点です。
公益財団法人日本国際教育支援協会が公開している資料によりますと、令和2年の「日本語教育能力検定試験」合格者は2,613人で、応募者に対しての合格率は23.0%です。
超難関というほどの合格率の低さではないですが、試験対策の勉強さえすれば必ず受かるような難易度でもありません。
特に期限を決めることなく、ゆっくりと勉強を続けて日本語教師になろうという人であれば構いません。
しかし、日本語教師として働きたい日時が決まっている場合は、不確実な日本語教育能力検定試験より、確実に条件を満たすことのできる日本語教師養成講座の方が向いています。
模擬授業などを経験することができる
語学学校で日本語を教える際には、日本語のみで授業を行う形式、いわゆる直接法を用いることが多いです。
したがって、専門的な教育の知識や経験がないと、教師として必要な品質を出すことができない可能性があります。
日本語教師養成講座では、ほとんどの場合、模擬授業がカリキュラムに組み込まれているので、卒業後すぐに教育現場で役立つスキル・経験を得ることができます。
多くの日本語教師が非常勤教師から仕事を始める理由のひとつに、授業の準備に膨大な時間を要するので、最初から常勤教師は勤まらないという認識があるからです。
模擬授業は準備の方法から学べるので、実践的な経験が積める貴重な場です。
模擬授業が充実しているかどうかを見極め、受講する講座を選択すると良いでしょう。
実際の流れは、以下のとおりです。
1. 教えるテーマについての文法・理論を理解する
例えば「いる」と「ある」について教える授業であれば、文法上のルールや言葉の概念、それぞれの言葉の使い分けの場面などについて、自分自身がしっかりとした知識を持っていることが重要です。
2. 授業の流れを組み立てる
決められた時間の中で、理解しやすい話をするためには、どのような順番で話せばいいか台本作りを行います。
3. 教材作成
学生の理解を手助けするような教材を準備します。
必ずしも自作する必要はなく、すでに世の中で広く活用されている教材を利用しても問題ありません。
4. 協力者を相手にシミュレーションを実施
実際に生徒に対して授業を行う前に、一度授業を通しで実施して、改善点をフィードバックしてもらいます。
講座受講中であれば、先生に対してシミュレーションを行うことができるので、高い学習効果が期待できます。
5. 実際に模擬授業を実施
おそらくは無我夢中であっという間に終わってしまうでしょう。
あとで振り返りを行うために、動画撮影をすると良いです。
6. フィードバックを受ける
撮影した動画を視聴し、自分自身で振り返る作業も大切ですが、プロフェッショナルである第三者から、客観的なアドバイスを受けることはとても重要です。
このような一連の流れを何度か体験すれば、教える内容が変わっても授業準備のプロセスは同じなので、日本語講師として独り立ちする際に役立つ経験となります。
日本語教師の実務経験がないとしても「自分はプロの日本語教師だ」と言える根拠になりえるわけです。
養成講座運営学校側の事情
日本語教師養成講座を行なっている学校に限らず、介護士や看護師、アニメーターやITエンジニアなどの専門学校においても、卒業後の就職率は学校の経営を左右する重要ポイントです。
なぜなら、学校選びをする生徒は就職率の高い学校を選ぶ傾向が強いからです。
したがって、必然的に養成講座運営学校は、入学後の学生に対する就職支援には力を入れることになります。
具体的には、以下のような充実した就職活動のサポートを受けることができます。
・受講生への求人案件の告知(掲示板など)
・就職先などのキャリア相談の実施
・書類作成や面接対策などのレクチャー
・就職支援セミナーなどの実施
もちろん就職率を上げるために、就職先である語学学校とのパイプがとても重要になります。
「日本語教師になったらここで働きたい」と考えている語学学校がすでに存在するのであれば、その学校と強いパイプを持っている養成講座運営学校を選ぶべきです。
学校選びは、ほぼ就職先選びであるという認識を持った方が良いでしょう。
給付金を受けられるチャンス
厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練を受けた場合に、その費用の一部を「教育訓練給付金」として受け取ることができます。
上限を10万円とし、入学料および受講料の合計額の20%がもらえます。
また、現在失業中でハローワークに通っている状況であれば「教育訓練支援給付金」を活用して、日本語教師養成講座に通うこともできるかもしれません。
対象となるには条件があるので、必ずご確認ください。
雇用保険の被保険者であった期間が通算3年以上(転職等による被保険者の空白期間が1年以上の場合は通算されません)あり、受講開始日において被保険者であるか、被保険者でなくなって1年以内であること、など
また、自治体によっては、日本語教師養成講座が対象講座の中に入っていないことがあります。
こちらも、必ずご自身が在籍している自治体の状況を確認してください。
参考:
厚生労働省 教育訓練給付制度
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
ハローワーク インターネットサービス
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/kensaku/GECA150010.do?action=initDisp&screenId=GECA150010
まとめ
今回の記事では、日本語教師になるために、日本語教師養成講座を修了するメリットについて考察しました。
ひとくちに日本語教師といっても、以下のような希望する就業スタイルによって、雇用までの道のりは変わってきます。
・海外で活躍したい
・国内で活躍したい
・常勤教師として仕事をしたい
・ボランティアなどで日本語教育に関わりたい など
日本語教師自体が、何歳からでもチャレンジすることができるため、大学進学前の学生もいれば、早期退職によって第二の人生を日本語教師として過ごしたいという方もいるでしょう。
経済状況や融通の利く時間などもまちまちですので、ご自身に合致した方法を選択する必要があります。
いずれにしても、重要なのは、採用する学校側が教師に求めているのは就業の時点で独り立ちできるかどうかという点です。
経験不足の教師を周囲がフォローすることはあっても、授業の準備などをマンツーマンで手取り足取り一緒に行うことはありません。
採用試験では、ほとんどの場合に模擬授業が実施され、独り立ちできているか否かが試されます。
日本語教師になりたいのであれば、自分の状況に適した方法を選んで構いませんが、少なくとも模擬授業は軽々と実施できる状態に仕上げてからでなければ、職に就くことは難しくなります。
生徒にとって、教師が新米であるかどうかはまったく関係ありません。
教壇に立ったら、すぐにプロフェッショナルとして活動するということを前提に、取るべき方法を考えてみてください。
今回の記事が、あなたの現在の状況とキャリアプランに合致した方法を選択するための参考になれば幸いです!