【海外で働く日本語教師】今後の需要予測と海外で働くために必要なこと

あなたが海外で働く日本語教師を目指しているとしたら、今何をすべきだと思いますか?

国によって制度が違うため「何をすべきか迷う」という方もいるのではないでしょうか

その答えは、外国籍の方が「語学教師」として日本で働くためにするべきことを調べると、見えてくることが多くあります。

英語教師」とひとくちに言っても、中学校や高等学校などの教育機関で教える英語教師と、語学学校で教える英語教師では、求められる教育の内容が違います。

当然、必要な資格やスキル・経験は異なります。

今回の記事では、身近な存在である英語教師の状況を理解することをヒントに、日本語教師として海外で働くにあたり、働く地域や教育機関の種類によって異なる、さまざまな事情を考察していきます。

目次

日本で働く外国籍の語学教師の事情

日本人で働く外国籍の語学教師の方々は、母国でどんな準備をして日本で働いているのでしょうか

日本政府が、日本に入国してくる外国籍の語学教師に課している条件を見ていきます。

在留するためにはビザの取得が必須

海外で仕事に就く場合、ほとんどの国では在留するための長期ビザが必要になり、語学教師も例外ではありません。

日本の法律では、外国籍の方が民間の語学学校で自分の母国語の語学教師になる場合は「国際業務」の在留資格が必要です。

国際業務
① 3年以上の実務経験があること(大学を卒業している場合は除外)
② 日本人と同等額以上の報酬を受け取ること

母国語を教える場合は、大学さえ卒業していればビザの取得が可能です。

しかし、定職がないとビザがおりないので、事前に就職先を見つけておく必要があります。

ボランティアでは、ビザの取得ができないようです。

一方で、母国語が英語でない外国籍の方が日本で語学教師になる(母国語以外の言語を教える)場合は、必要な在留資格が「人文知識」となります。

人文知識の在留資格を取得するには、以下が求められるため、取得の条件がかなり厳しくなります。

・英語を専攻して大学を卒業している
・10年以上の実務経験がある など

母国語であるかどうかは、とても重要なポイントです。

小学・中学・高校などで英語教師になるには教員免許が必要

外国籍の方が、小学校・中学校・高校・大学・専門学校といった教育機関で語学教師として働く場合「教育」の在留資格が必要です。

① 教える外国語によって12年以上教育を受けている、または5年以上の実務経験があること

② 以下のいずれかに該当していること

・大学卒業、または大学卒業と同程度の教育を受けていること
・行う教育に関連する教育免許を持っていること
・行う教育に必要な技術または知識に関連する科目を選考して日本の専修学校の専門課程を修了していること

③ 日本人と同等額以上の報酬を受け取ること

※インターナショナルスクールなどで語学教師を勤める場合は②の条件は除外されます。

上記のビザ取得の条件とは別に、教員免許が必要です。

母国で教員免許を取得していれば、日本の教員募集における外国籍枠への応募が可能です。

教員免許を取得していない場合、外国籍の方でも日本で教員免許を取得することは可能です。

その場合は、教育大学などに設置されている外国人留学生枠を活用して取得することになります。

※小学校の英語活動アドバイザーや児童英語教師は、教員免許が不要ですが、小学校英語指導者資格(J-SHINE)を所持していることが望ましいようです。

自分が目指したい日本語教師像を考え

なぜ日本語教師とは直接的には関係のない、日本在住の外国籍の語学教師について考察したかというと、国によって多少の違いはあれど、同じような考え方で法律が決まっていることが多いので、事情が似通っているからです。

例えば、ビザ取得の条件と、実際の求人に書かれている募集要件は異なっている点などです。

インターネット上に海外の情報はあふれていますが、そこからそれぞれの国が渡航者に課している条件を正確に調べるのは、意外に大変です。

そのため、海外で働く語学教師の一般的な事情について、情報が取りやすい日本で調べておいて、基本的な考え方を理解しておくことが有効的であるのは間違いありません。

外国への短期在留を希望するか?それとも長期在留?
・語学学校などでの就業それとも小学校・中学校・高校といった教育機関での就業? 

自分が目指したい日本語教師像を考え、それに合わせた対策が必要です。

語学学校で日本語を教えるには

日本語教師には、正式な資格は存在しません。

日本にある英語教室で英語を教えている語学教師には教員免許が不要であるように、海外にある日本語学校で日本語を教える場合、教員免許は必要ありません。

海外の語学学校の採用条件は、おおむね以下のとおりです。

① 大学の主専攻または副専攻で日本語教育を学んだ者
② 日本語教師育成講座(420時間以上)を修了した者
③ 日本語教育能力検定試験に合格した者

実際の求人に記載されている採用条件を考察すると、上記に併せ、以下の3つの条件が加えられることが多いようです。

・4年制大学卒業以上の学歴
・英語力もしくは在留する国の母国語力
・日本語教育歴を有する

4年制大学卒業以上の学歴は、専門職としてのビザを取得するために必須です。

何らかの理由で長期滞在のビザを取得しているのであれば、こちらの条件は満たす必要がない場合もあります。

その他に、フィリピンでは、ビザ取得のためには(母国などで)教育関係の仕事で2年以上経験があることが求められるようなので、それぞれの国の情報を調査し、準備する必要があります。

就業したい国が決まれば、そこからは具体的な情報収集が必要です。

語学学校で日本語を教える際には、日本語のみで授業を行う形式、いわゆる直接法を用いることが多いので、現地語の語学力は必要とされないケースも多いです。

しかし、普段のコミュニケーションをとるためには、ある程度の語学力は必要です。

日本の語学学校と違い、全く日本語が話せない方が対象になるケースもあります。

その場合、英語もしくは在留する国の母国語力で、生徒とコミュニケーションが取れることが必要となります。

もうひとつ、よく見かける採用条件に「日本語教育歴を有する」というのがあります。

それは、1校あたりに在籍している日本語の語学教師の数が少ないため、教え方を迷っても相談することが難しく、必然的に高いノウハウや経験が必要となるからです。

いわゆる、既に自立した語学教師として授業を任せられるかどうかは、採用されるか否かの鍵を握っています。

従って、海外で日本語教師になりたいのであれば、なにより自分自身のために、以下をおすすめします。

① 大卒資格と語学力を取得し、
② 日本国内の語学学校で経験を積み、
③ 日本語教育に対して自信を持てる状態になってからチャレンジする

特定技能実習生向けに日本語を教えるには

介護職や農業など、特定職種の労働力不足を補う目的で、2019年4月1日から「特定技能」の在留資格が施行されました。

特定産業分野である14業種に限定された制度であり、特定技能実習生として認定されるためには、以下の試験に合格しなければなりません。

・特定技能評価試験
・日本語評価試験

そのためには、JLPT(日本語能力試験)でN4以上の日本語レベルが必要となってきます。

専門の教育を受けないと、越えるのは難しいハードルです。

しかし、日本での就業状況が良好であれば、特定技能に移行することができるので、外国籍の方には大きなメリットがあります。

なお、特定技能評価試験の内容は、特定産業分野によって異なりますのでご注意ください。

したがって、今後は特定技能実習生として日本で働くための日本語教育が求められることが予想されます。

フィリピンの求人では「今までの一般的な日本語教育のみではなく、仕事・生活に直結した日本語教育を実施しています」という記載が見られました。

ベトナムやマレーシアの求人では「3年以上の勤務経験(日本語教師に限らず)がある方」という条件を課している場合もあります。

職場でのコミュニケーション能力が問われるため、教師自らが日本での職場体験を求められるケースは、これからも増えていくでしょう。

参考:
厚生労働省 介護分野における特定技能外国人の受入れについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html

中高などの教育機関で語学教師として働くには

海外においても、小中高といった教育機関では、語学を教えるだけでなく教育者としてのスキルや経験も求められます。

そのため、日本の小中学校で働く英語教師と同じように、教員免許の取得は必須だと考えたほうが良いでしょう。

現地の教員免許を所持していなくても、日本の教員免許さえ持っていれば、外国籍枠として応募できる国も少なくありません。

その際は、多くの場合、教員免許の専攻について特に制限されていないので、国語に限らず、社会や理科といった専攻でも問題ありません。

もしも教員免許を持っていないのであれば、まずは現地の語学学校の語学教師として就業しながら、現地の大学に通学して教員免許を取得するという方法もあります。

例えば、オーストラリアには、サンシャインコースト大学という教育機関があり、大学で日本語を勉強していなくても教育修士課程で日本語を専攻できて、現地の中高の日本語教師になる資格が取れるコースが設けられています。

必須条件として、大学進学向けの英語試験(IELTS)で7.0~7.5という高い英語力基準が設定されているので、注意が必要です。

就業したいと考えている国によって、教員免許の取得方法は異なりますが、おおむね授業料・生活費、そして年月をかなり要します。

現地の教員免許の取得から考えるのであれば、高校生や大学生の時点で、計画的に進めることをおすすめします。

もしあなたが社会人だとしたら、数年は無収入で過ごせるだけの貯蓄を行ってから、チャレンジする必要があります。

いずれにせよ「海外で教える教師になりたい」のではなく「日本語教師になりたい」のであれば、とりあえずは日本で教員免許を取得しておく方が無難であるのは間違いありません。

海外で働く日本語教師の今後の需要予測

「2015年 海外日本語教育機関調査(国際交流基金)」によると、日本語教育は世界の130の国と7つの地域で行われています。

多少の変動はあるものの、ほとんど数に変わりはありません。

全世界の日本語教育機関数の6割以上、学習者の8割近くが東アジア東南アジアの2地域に集中しています。

日本語教育市場は広がっていないようですが、日本語学習者はそれぞれの地域で増えています。

特に近年では、以下の国で顕著です。

タイ、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、オーストラリア、インド

その結果、教師1人に対する生徒数は増加傾向なので、改善するための追加募集には期待できそうです。

さらに、ベトナムには外国語のひとつとして、正式に授業へ日本語教育を取り入れている学校もあります。

前述した新しい在留資格・特定技能の施行も、日本語教師需要を増やす要因になる可能性を持っています。

一方で、中国、インドネシア、韓国といった学習者数の多い上位3国や、ヨーロッパでは減少傾向にあります。

このように、海外における日本語教師の需要は、今後も右肩上がりを維持しつつ、変化していくことが予想されます。

進路を決める際には、市況についてもしっかりと理解しましょう。

参考:
国際交流基金「海外の日本語教育の現状 2015年度 日本語教育機関調査より」
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey_2015/all.pdf

公益社団法人日本語教育学会「ベトナムにおける日本語教育の事情-現状と今後の期待-」
http://www.nkg.or.jp/wp/wp-content/uploads/2018/10/sekai-vietnam1011.pd

まとめ

海外で日本語教師として働くために、今何をすべきなのか考えてきました。

大切なのは「そもそも海外で日本語教師として働きたいと考える目的は何なのか?」ということです。

「一度は海外で働いてみたい」という方もいるでしょうし「永住して教育に携わりたい」「日本の文化を世界に広めたい」という方もいるでしょう。

例えば、日本の文化を世界に広げるためには、自分が日本文化に精通している必要があります。

そのため、生け花や俳句、武道といった伝統文化のみならず、漫画などのサブカルチャーを学ぶ必要が出てきます。

目的によって、当然学ぶべき内容も変わってきます。

「なぜ海外でなければならないのか」「何を教えたいのか」「将来の自分像」について、まずは向き合い、なりたい自分が見えたとき、今何をすべきなのかが見えてきます。

この記事を機会に、なぜ日本語教師を目指しているのか、再度見つめ直していただけると嬉しいです。

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