国内の日本語学校(日本語教育機関)に通っている学生たちは、どんな目的で、どこの国から来ている方が多いのでしょうか?詳細を見ていくことにしましょう。
参考:一般社団法人日本語教育振興協会 日本語教育機関の調査・統計データ(2020年度) https://www.nisshinkyo.org/article/overview.html
日本語学習の目的は多種多様
日本語学校の歴史は、1980年代にまで遡ります。当時の中曽根内閣が「留学生受入れ10万人計画」を作り、法務省から告示を受けた日本語教育機関を多数設立しました。
日本語学校ができた当初の学生の目的は、大学への進学が多いことが特徴でしたが、インターネットが広まり、日本のアニメなどに興味を持つ方が増えたこともあり、現在では、大学・大学院・専門学校への進学だけではなく、就労や日本文化体験など非常に多様化しています。
アジアの方は進学や就労が主
のちほど詳細を記述しますが、日本国内の日本語学校に通っている学生の中でいちばん多いのは、中国から来られた方です。
中国から日本に来られている方は、日本語学校に通ったあと、日本の大学や大学院・専門学校などに進学するケースが多く、他のアジアの国々も同様の傾向があります。
欧米諸国の方は日本文化の体験も
現在では「Netflix」などの動画サイトで、世界各地から日本のアニメや映画を見られる時代へと突入しています。そこで大人気なのが日本のアニメです。アメリカやヨーロッパなどの欧米諸国でも日本のアニメや日本文化は根強い人気を誇ります。
そのため、「日本のアニメで日本に興味を持ち、日本で暮らしてみたくなった」「長い人生の中で、一回は日本文化を体験してみたい」などの気持ちから来日され、日本語学校に通っている方もいらっしゃいます。
その後の彼らの進路は、日本で働いたり、さらに日本語学習を進めたりする場合が多いです。
一方で、日本への滞在を楽しい経験として捉え、帰国される場合もあり、実に多種多様です。
学習者の出身地
学習者の出身地を詳しく見ていきましょう。学習者の出身地のランキングを示すと、以下の通りです(2019年度)。 1.中国 39.7% 2.ベトナム 31.0% 3.ネパール 7.0% 4.台湾 3.5% 5.韓国 2.9% 上位の2カ国で70%を占めていることが分かります。
この結果にびっくりされる方も多いのではないでしょうか?
実際には100カ国以上から来日
日本の日本語教育機関に在籍している学習者の7割は中国とベトナムからということが分かりましたが、実際には、多数の国から来日しており、2020年度では103ヶ国・地域(2019年度は107カ国・地域)にまでのぼっています。実にたくさんの国の人々が日本語の勉強をされていることが分かります。
日本語学校卒業後の進路
2019年度のデータによると、日本語学校卒業後の進路は以下の結果です。 1.進学 75.3% 2.帰国 15.2% 3.その他 9.5% 技能実習生などのイメージが強く、「卒業後は就労される方が多いのでは」と考えられる方も多いかと思いますが、実際には4人に3人は日本語を学習したあと、さらに進学します。
卒業後の進学先
日本語学校卒業後の進路が進学であることは分かりましたが、では、実際にはどのような学校へ進学されているのでしょうか。そのデータを細かく見ていきましょう(2017年度)。
1.専門学校・専門課程 60.6% 2.大学 26.5% 3.大学院 7.9% 日本で就労ビザを取るための最終学歴は、母国での4年生大学卒業もしくは日本での専門学校卒業以上の資格が必要ですので、日本で就職することを目指している学習者も進学するケースが多いです。
日本語学校に通う目的
一般的には、日本語学校に通われる方の目的は3つあり、この目的で日本語学校に通われる方が大多数を占めます。 1.日本の大学や専門学校へ入学したい(進学) 2.日本で就職したい(就労) 3.母国にある日本の企業に就職したい(帰国) 卒業後に進学する方が多いように、日本語学校への通学目的も進学が多数を占めます。
その次に、就職関連がランクインします。海外進出企業や海外との取引が多い企業にとっては、母語と日本語ができる留学生は有力な戦力になります。帰国して母国で働く場合も、日系企業や国際企業へ就職するにあたって、日本語ができることは大きなアドバンテージになります。
日本の大学・専門学校に入るための条件
実は、日本の大学や専門学校に入学したいという方のために役立つ資格があるのです。それは、日本留学試験(EJU)と日本語能力試験(JLPT)です。これらの資格を取るために日本語学校に通うという学習者も多いです。
日本留学試験(EJU)
外国人留学生が、日本の大学(学部)などに入学したい場合に受ける試験です。出題科目は、日本語、理科(物理・化学・生物)、総合科目、数学です。日本における大学入試共通テストのような扱いです。日本にある4年制大学のEJU利用率は6割に上っており、自分自身が志望している大学が指定した科目を受けます。この試験の結果によって、大学の合否が決まります。
日本語能力試験(JLPT)
日本語教師を目指されている方や日本語教育に興味がある方なら、日本語能力試験という名前を聞いたことのある方が多いのではないでしょうか。
この日本語能力試験は、外国人の日本語レベルを測るための試験で、世界最大規模の日本語の試験です。こちらは英検のようにN1からN5までの級に分かれており、N1がいちばん難しいです。
広く普及した試験で評価も分かりやすいため、外国人が日本で就職する際にとても重要な要件になります。
もちろん日本の大学に進みたいという方にも、日本語能力試験を受けておくことは非常にプラスに働きます。
EJUが受けられない国や地域の学習者は、JLPTの成績を代替とすることも可能です。 ちなみにN1レベルだと、日本の新聞やニュースを理解できたり、ビジネス日本語が使えたりするようなレベルです。
N3レベルで、ある程度の日常会話が理解できるようなイメージを持っておくと良いでしょう。
コンビニで働くにはN2レベルが必要
ちなみに、最近はコンビニでアルバイトをしている外国の方も多くいらっしゃいますが、彼らに課せられるのはN2合格程度の日本語力です。N2は、具体的には、敬語を含め場面に応じたコミュニケーションを行い、抽象的なことの説明ができる日本語レベルとされています。
コンビニでは、食品、雑貨から金融サービスに至るまで、何でも取り扱わなければなりません。N2レベルに合格するには相当な学習量が必要ですので、彼らはとても努力をされた賢い方というわけです。 参考:日経新聞「実は日本語エリート?外国人コンビニ店員がすごい」 https://style.nikkei.com/article/DGXZZO29577110Z10C18A4000000/