【教科書分析】「いろどり 生活の日本語」3つの特徴やオンラインコースについて解説!

国際交流基金(JF)が開発した日本語教材である『いろどり 生活の日本語』(以下『いろどり』)をもとにしたオンラインコースが展開されています。

今回は『いろどり』とはどのような教科書なのか、オンラインコースはどのような内容なのか、詳しく見ていきたいと思います!

目次

『いろどり 生活の日本語』3つの特徴

生活や仕事のための日本語を学ぶ教科書

特定技能の資格などで来日した外国人が、日本での生活場面で求められる、基礎的な日本語コミュニケーション力を身に付けられるように作成された教科書です。

留学(学習)以外の理由で日本語が必要な方、読み書きよりもコミュニケーションを優先して学習したい方に向いている教科書だと言えます。

いろどり』では学習目標が設定されていますが、これは同じく国際交流基金が作成した「JF生活日本語Can-do」に基づいています。

日本で働いたり、買い物をしたり、遊びに行ったり、食事をしたり、他の人と交流したりなど、実際の生活の中で日本語を使ってできるようになるべきことが341項目載っています。

いろどり』の読んだり書いたりする練習には、店のメニューや広告・街の看板・SNSやメッセージツールの画面といったレアリアや、これらをできるだけ本物に近く再現した素材が使われているのも特徴です。

視覚的に楽しく、分かりやすい教科書となっています。

参考:
JF生活日本語Can-do
https://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_rsorcs/seikatsu.html

3段階のレベルに対応

いろどり』は、入門・初級1・初級2の3つのレベルで構成されています。

入門は「JF日本語教育スタンダード」(以下「JFスタンダード」)のA1レベル、初級1と2はA2レベルにあたります。

JFスタンダードとは、コースデザイン・授業設計・評価を考えるための枠組みです。

この枠組みを使用することで、教師側の授業設計やコースデザインの参考になるだけでなく、学習者の目標設定学習管理もスムーズに行うことができます。

JFスタンダードは「日本語で何がどれだけできるか」(前述の「JF生活日本語Can-do」)という課題遂行能力をレベル指標にしていて、A1・A2・B1・B2・C1・C2の6レベルに分かれています。

例えば、以下のようなレベルになっています。

A1
あいさつをしたり、覚えた表現を使って、ごく簡単なコミュニケーションができるレベル

A2
身近な話題について、短い基本的な日常会話ができるレベル

いろどり』は、家族や仕事といった身近な話題の情報交換をするための初級レベルの日本語能力がカバーできる教科書だと言えます。

参考:
JF日本語教育スタンダード
https://jfstandard.jp/top/ja/render.do

すべて無料で利用可能

いろどり』のありがたい点は、すべてが無料で使えることです。

入門・初級1・初級2のレベルごとに3冊の教科書がありますが、ウェブサイトから教科書のPDFファイルや音声、付属資料をダウンロードすることができます。

タブレットやスマホに入れて見たり、印刷して使ったりすることが可能です。

3冊を合計すると全1,433ページにもなります。

ダウンロードはこちらのサイトから可能です。
https://www.irodori.jpf.go.jp/resources.html

各課の構成について

入門・初級1・初級2は、それぞれが9つのトピック、18課から構成されています。

1課あたりの授業時間の目安は150~180分ですが、課によって活動の数が違うので、それに合わせて授業時間数を調整する必要があります。

各課の構成について、入門の3課を例に見ていきたいと思います。

入門の3課では、自己紹介の表現を学習します。

トピックと課のタイトル
「よろしくお願いします」

導入の質問
「はじめて会う人自己紹介するとき、どんなことを言いますか?」

その課で取り上げるテーマについて、具体的にイメージするための質問です。
自分の経験を振り返ったり、クラスで話し合ったりします。

活動
①自己紹介
②名札を書く
③初対面の人に名前や出身地を尋ねる
④申込書を書く

Can-doを達成するための活動で、各課に3~6の活動があります。

聴解スクリプト

漢字のことば
「名前、国、私」

活動の中に出てきた漢字のことばを勉強します。(入門の1課はひらがな、2課はカタカナ)

文法ノート
N1(私)はN2 [名前] です。/N [場所] から来ました。

各課で勉強する文型や表現についての説明です。(入門の1課、2課はなし)

日本の生活TIPS
「日本の文字、名前の敬称、元号」

活動の中に出てきた日本文化や日本事情についての説明です。

ベトナム各地で説明会が開催

2020年3月から『いろどり』がオンラインで無料公開され、国際交流基金による説明会がベトナム各地で開かれているそうです。

2020年7月時点で、ハノイで2回、フエやホーチミンでも1回開催されています。

国際交流基金の日本語専門家の足立健治さんによると「ハノイは技能実習生の送出機関や民間の語学センターの数が他と比べても特に多い地域なので、まずはハノイで開催した」ということです。

よく使われている日本語の教科書とは異なり、前述の「Can-do」という特徴的なコンセプトがあるため、その特徴を理解してもらい、より効果的に使ってもらうことが説明会の目的のひとつです。

説明会の主な対象は、ベトナムで日本語を教える教師で、会場では実際に『いろどり』を使った模擬授業も体験できます。

さらに、教師が自分で「Can-do」項目が考えられる練習も行います。

この説明会は、今後も定期的な開催が予定されています。

参考:
ハノイ経済新聞「無料の日本語教材『いろどり』国際交流基金がベトナム各地で説明会」
https://hanoi.keizai.biz/headline/37/

オンラインコースの開講

2021年5月11日に『いろどり』初級1のオンラインコースが開講しました。

いろどり』の教科書を使って、自習するためのコンテンツです。

主に、これから日本で働きながら生活することを目指している海外在住の外国人を対象としていますが、国内外を問わず、誰でも無料で登録・受講できます。

スマートフォン、パソコン、タブレットで閲覧できるので、仕事などで時間の制約がある方でも、スキマ時間を利用して時間や場所を問わず学習することができます。

コースは、Can-do目標に沿って学習を進める「学習コンテンツ」、学習者が苦手だと思うところや自信がないと思ったところを練習することができる「練習コンテンツ」で構成されています。

それぞれ以下のことができます。

学習コンテンツ
使用場面を理解するための動画視聴、動画の人物との会話練習ができ

練習コンテンツ
語彙・漢字・文法・表現の中で、苦手なところを練習できる

その他にも、自学自習をサポートする「サポートコンテンツ」や、学習の進み具合を確認できる「マイページ」も用意されています。

自分のペースで理解を深めながら、様々な生活場面で必要となる日本語が一通り学べるようになっています。

初級2のコースは、2021年10月に開講予定です。

また、現在は解説言語が英語のみですが、今後は以下の言語にも対応していくようです。

中国語、インドネシア語、クメール語、モンゴル語、ミャンマ―語、ネパール語、タイ語、ベトナム語

これらの言語による初級1のコースは2022年4月、初級2のコースは2022年10月に開講予定です。

参考:
いろどり日本語オンラインコース
https://www.irodori-online.jpf.go.jp/

PR TIMES「『いろどり日本語オンラインコース』開講~いつでもどこでもだれでも生活に必要な日本語を無料で学べる~」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000079420.html

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