【教科書分析】「漢字たまご」の3つの特徴とメリット・デメリット

今回は『漢字たまご』の教科書分析をしていきます。

凡人社が出版している教科書で、学習者が漢字の基本となるルールを理解し、その蓄えた知識をもとに漢字を能動的に学び、漢字学習が社会へと広がっていく様子を、たまごの成長と重ねて表しているそうです。

特徴やメリット・デメリットなど、詳しく見ていきましょう!

目次

3つの特徴

場面・トピックごとに必要な漢字が学べる

漢字たまご』は「漢字ができるようになる」とはどういうことか?という疑問から生まれた教科書で、初級と初中級の2冊構成です。

それぞれ15の場面・トピックに必要な漢字を学習します。

例えば、以下のようなトピックがあります。

・何を食べる?
家族のこと
好きなこと
病気のとき
旅行に行こう

どのトピックでも、実際の場面に近い状況で、必要な情報を読み取ったり漢字で書いたりする練習をして、力を試すことができます。

自分なりの漢字の学び方を身につけられる工夫が随所にあるのが特徴で「身近にある漢字が『わかる』『できる』」という実感が得られます。

できる日本語』に準拠していて『漢字たまご』の初級・初中級を学習すると、JLPT N5・N4の漢字をカバーすることができます。

できる日本語』も『漢字たまご』と同様に実践的な練習を重視し「自分のこと/自分の考えを伝える力」「伝え合う・語り合う日本語力」を身につけることを目的にした教科書です。

参考:
日本語の凡人社 商品一覧『できる日本語 初級 本冊』
https://www.bonjinsha.com/goods/detail?id=6942&page=1&pt=4&disp_count=20&name=%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B&goods_order=1

3種類に分類された漢字

登場する漢字は、以下の3種類に分かれています。

提出漢字
読み方と書き方の両方を練習します。

読める
意味と読み方が分かればいい漢字です。
あとの課で「提出漢字」として再登場する場合もあります。

見て、わかる
サインとして意味が理解できればいい漢字で、読み書きは問われません。

例えば「買い物」がテーマの初級2課には、このような漢字が登場します。

提出漢字
一二三四五六七八九十百千万円

読める
牛肉、豚肉、鶏肉

見て、わかる
~産、~引き、酒

2パターンの練習

漢字たまご』は1冊15課から構成されていますが、各課に以下の2パターンの練習が収録されています

練習1:書いてみよう
練習2:やってみよう

練習1:書いてみよう

提出漢字の読み書きの練習をします。

漢字をパーツに分けたり、パーツから漢字を作ったりする練習を通じて、漢字が複数のパーツで作られていることを意識化します。

意味のグループでまとめる問題や、音読み・訓読み、形成文字に注目した練習もあります。

練習2:やってみよう

実際の場面に近い状況で、必要な情報を読み取ったり、漢字を書いたりできるようになるための実践練習です。

どのような点に着目すれば必要な情報が得られるか、未知の漢字や語彙があったときにどのように推測するかを実際に体験します。

すでに知っている知識をフルに使って、分かる範囲の中で、いかに必要な情報を得るかという練習です。

巻末:もう少しやってみよう

15課を終えると、巻末には「もう少しやってみよう」という練習が4回分収録されています。

こちらは3~4課ごとにまとめて復習するための練習で、読み書きが中心です。

参考:
にほんごの凡人社『漢字たまご』
https://www.bonjinsha.com/wp/kanjitamago

漢字たまご 初級「本書の構成と使い方」
https://www.bonjinsha.com/wp/wp-content/themes/bon/pdf/kanjitamago/04_kanjitamago_tsukaikata_J.pdf

メリット

漢字の読み・書き・例文などがひと目で分かる

漢字学習のための教科書はたくさんありますが、以下のように「かゆいところに手が届かない」という思いをしている先生もいらっしゃるかと思います。

漢字を実際に書いて練習するスペースが少ない
書き順が載っていな

漢字たまご』の提出漢字は、以下のすべてがまとまっています。

・読み方
・その漢字を使った熟語と例文
・書き順
・実際に漢字を書いて練習するスペース(6回分)

その漢字にまつわる情報がひと目で分かり、教科書だけで完結できるので、補助教材などを用意する必要がありません。

さらに、空欄やメモ欄も設けられていて、ここには学習者が自由に母語訳やオリジナルの記憶法・イラストなどを書き込むことができます。

 関連する漢字・語彙を一緒に学習できる

N5~N4の漢字を学習しただけでは、日常生活の中ではまだまだ知らない漢字がたくさんある状態です。

漢字たまご』では「読める」と「見て、わかる」の漢字があることで、そのような問題を解消することができます。

前述の初級2課では、N4レベルの「牛(肉)」に加え、意味と読み方が分かればいい漢字として、N1レベルの「鶏(肉)」と「豚(肉)」も紹介されています。

スーパーの精肉コーナーで実際に買い物をしたり、宗教やアレルギーなどの理由から自分が食べられる食材を選別したりするといった、実生活の場面が想定されています。

N5~4の漢字だけでなく、関連する漢字や語彙を認識できるようになることで、実践力が高まります

また、初級2課の練習1と2では、以下のような問題を解きます。

割引シールが貼ってある、おにぎりの値段を計算する

スーパーのチラシから、お買い得な食材や食材の産地を読み取る

実際に遭遇しそうな状況での対応力や、自分が知らない漢字がある状況でも意味を予測して理解する力を養うことができます。

これは漢字学習に限らず、読解問題や聴解問題など、他の日本語学習の分野においても活かせる力です。

デメリット

 問題の解き方の説明が必要

漢字たまご』には、漢字を偏と旁・冠と脚に分類したり、その分類した漢字を使って自分で例文を作ってみたり、JLPTや学校の試験とは一味違った練習問題が多いです。

また、虫食いになっている箇所に漢字を埋めるといったゲーム性のある練習問題もあります。

筆者も初級クラスで使用したことがありますが、説明が不十分で、問題の解き方が分からずに全問不正解の学生や、分からない設問を飛ばしてしまう学生が出てしまいました。

特に練習2は、読解や聴解に慣れていない初級学習者にとっては、少しハードルが高いかもしれません。

教師が問題の解き方をきちんと説明したり、学習者のレベルによっては2周したりするなど、説明の徹底進め方の工夫が必要です。

まとめ

今回は『漢字たまご』について見てきました。

漢字については、オリジナルの教材や補助教材を用意されている先生も多いかと思いますが、『漢字たまご』では新しい漢字の導入から関連する漢字の紹介、実践的な練習まで1冊で叶います。

凡人社のサイトからは、教師向けに各課の指導のヒントとポイントが載っている資料もダウンロードできます。

この資料には、その課を学習するとできるようになること、教室での学習者とのやり取りの例などが詳しく載っています。

今回の記事が、みなさんが教科書を選定・分析する際の参考になれば幸いです!

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